感想文

本とか映画とかゲームとか。ネタバレはしないようにしています。

邪魔

邪魔〈上〉
4062739674奥田 英朗

おすすめ平均
stars一級のクライムノベル
stars説得力がある日常との連続性
stars平凡な毎日が瓦解していく恐怖。
stars「最悪」を読む前に読むべし
stars人物のディテールに舌をまく楽しさ

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「空中ブランコ」と同じ作者なんだけど、その印象を引きずったまま読み始めたので、あまりの毛色の違いにビックリ。

上・下巻ある長編。
平凡な主婦「恭子」や警部補の「九野」、悪いことを覚えはじめた「裕輔」、そしてその周辺の人々のことが描かれています。
平凡だった人生が、ちょっとしたキッカケで心惑わされたり、犯罪を犯してしまったり。
追い詰められる恐怖や、何とも言えないやりきれなさ。

一貫して、人間の心の暗い面や、どうにもならないことへの焦りやいらだち、もがきが描かれています。
とにかくみんな必死なの。
息苦しいような気持ちで読み進めていたのだけど、続きがすごく気になるので手は止まらない。
そして最後は『こう来たか〜』とため息。
でも救いのない終わり方ではないし、読後感はそう悪くない。

コミカルさはまったくなくて、最初に読んだのが「空中ブランコ」だった私にとってはホント意外でした。
こうなると、俄然、他の作品も気になってきちゃうよ〜。

邪魔〈下〉
邪魔〈下〉

2005/06/29 Wed | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 奥田英朗

空中ブランコ

空中ブランコ
4163228705奥田 英朗

おすすめ平均
starsキャラクターの際立ち具合
starsストレス社会のヒーロー
stars今後の活躍に期待!!
starsおもしろすぎて考えさせられる作品
starsはやいところ三作目を!

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先に読んだ彼が「これは面白いよ!」と言っていたので、かなり期待しながら読み始めました。
で、本当に面白かった!!

5つの短い作品が入っていて、連作集といった感じ。
一風変わった精神科医、伊良部が毎回登場します。
この伊良部先生が可愛いんだわー。
丸々太った体に子供のような無邪気さ、大胆不敵な行動。
それが訪れる患者の警戒心を奪い、癒しを生む。
あれよあれよと伊良部ペースに巻き込まれている内に、症状解決の糸口が見えてきちゃったりするのです。

伊良部のそれは本能なのか、確信犯なのか?
どっちにしても、魅力ある先生なのには変わりない。
好きだなあ。

割と軽いテンポで進んでいくし、読みやすいですよー。
でも考えさせられるところもあったり。
伊坂幸太郎の「チルドレン」と同じニオイをちょっと感じました。

コッコちゃん情報によると、この作品は「イン・ザ・プール」の続編のようなので、こちらも早く手に入れたいな。
でもその前に、本棚でスタンバイしてる「邪魔」を読もうっと。

2005/06/08 Wed | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 奥田英朗

ありがと。

ありがと。―あのころの宝もの十二話
4840111553ダヴィンチ編集部

おすすめ平均
stars駄目でした
stars気に入った物語、三つ

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先日読んだ「秘密。」が面白かったのでこれも購入。
テーマは「あのころの宝もの」。
「秘密。」と同じく、12人の作家の作品で構成されています。

恋愛っぽい内容が多いのかと思っていたけれど、必ずしもそうではなかった。
私が好きだなあと思ったのは、「町が雪白に覆われたなら(鵜飼恭子)」「モノレールねこ(加納朋子)」「光の毛布(中山可穂)」「愛は、ダイヤモンドじゃない。(前川麻子)」「届いた絵本(光原百合)」辺りかなぁ。
でも他のも独特な雰囲気の作品ばかりだったし、読んだことのない作家さんたちが多くて新鮮に読めました。
本としては「秘密。」の方が好きだけど。

次に本を買う時は、今回気に入った作家さんの中から選ぼうって思いました。

2005/06/06 Mon | 本 > 日本の小説・エッセイ > や行〜その他 > アンソロジー

秘密。

秘密。―私と私のあいだの十二話
4840112347吉田 修一

おすすめ平均
stars相手はどう考えているのか
stars小粋な短編集
stars12人の作家

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12人の作家たちの作品が収録されています。
それぞれが2つずつストーリーを書いていて、その2つは同じ出来事なんだけど別の人物からの視点で描かれているの。
「冷静と情熱のあいだ」のような、古くは「なぎさボーイ」「多恵子ガール」(古すぎ 笑)のような感じと言えばわかってもらえるかな?

執筆陣が(私にとってかなり)豪華。即買いでした。
ひとつひとつは短編だから、ちょっとした時間でも読めちゃいます。
しかもどれも面白いのよー。
趣向自体が好きというのもあるとは思うけど。

ダ・ヴィンチに連載されていたのでいくつか読んだことがあったんだけど、掲載は一組単位じゃなくて一つずつだったの。
こういうのとは知らずに、ストーリーの片割れだけ読んでた訳だけど、それでも楽しめてました。
それが本にまとまったら裏側視点でも読めちゃうんだよ、シアワセじゃない??オススメです。

2005/05/23 Mon | 本 > 日本の小説・エッセイ > や行〜その他 > アンソロジー

ステップファザー・ステップ

ステップファザー・ステップ
4062632853宮部 みゆき

おすすめ平均
stars続編を書いてほしいくらい。
starsとにかく読後感がすばらしい!!
starsほのぼのとしたあったかさ
stars面白い!
starsほのぼの

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久〜しぶりの宮部みゆき。
感想文を書くようになってから読んでないんだから、少なくても3年以上ぶりです。
読みやすさ、先が気になる展開はやっぱり流石。
この作品も面白かったよ。

プロの泥棒と、あるきっかけで知り合いになった双子の男の子たちがメインな登場人物。
連作で7つお話が入っていて、それぞれの中で事件が起こり解決されます。
各ストーリー毎に、この泥棒と双子たちが知り合いになったきっかけのエピソードが語られてるのね。これが鬱陶しかった。
連載物が本になったのじゃないかと思うんだけど、いちいち説明されるので『えーいもう知ってるから!』と言いたくなっちゃったよ。

内容は難しくなく、軽い感じ。
でもそれぞれのストーリーの最後にはちゃんと『なるほどー』っていう部分があって楽しめました。

2005/05/18 Wed | 本 > 日本の小説・エッセイ > ま行 > 宮部みゆき

いちばん初めにあった海

いちばん初めにあった海
4043539010加納 朋子

おすすめ平均
starsこころ救われる物語
starsふたりの主人公
stars心の彷徨い・・・海に漂う記憶
stars絆と魂の再生
starsふたりの女性の再生のものがたり

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2作品が収録されています。
ひとつめは、表題の「いちばん初めにあった海」。
読み始めた時、ちょっと『あれ?』と思いました。
何かモヤモヤするというか、すぐには入り込めなった。
前に読んだ「ななつのこ」みたいなホノボノ感がなかったからかな?
文章に親近感が湧かなかったのです。

でも、途中からはけっこう夢中で読んでました。
千波(主人公)が<YUKI>のことを思い出せるのか、本の謎、千波の過去。
それらが全部つながった時には、ちょっと感慨深い気分になりました。
本の裏の紹介には「感動のミステリー」と書いてあるんだけど、『謎が解けてスッキリ!』っていうよりは『あぁそうだったのね・・・』って感じ。わかりにくい?(笑)

そして2作品目。「化石の樹」です。
これは読んでいる途中で『あれっこの子ってもしかして・・・』ってなった。
上手いよなぁ。

両方とも、「ほのぼの」という雰囲気ではないかな。
でも読後感は悪くなかったです。
『何となくしみじみ』って気分になりました。

2005/05/18 Wed | 本 > 日本の小説・エッセイ > か行 > 加納朋子

メドゥサ、鏡をごらん

メドゥサ、鏡をごらん
井上 夢人

おすすめ平均
難しいところを狙いすぎでは
コワかった・・・
オチはともかくとして・・・
恐さは得られなかった。
果てはどこ?

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作家である藤井陽造が、異様なやり方で絶命。
理由はまったく不明。
しかし、残されたノートから、最後の原稿があるかもしれないとわかる。
婚約者である藤井の娘に協力を頼まれ、主人公がその原稿を求めて行動するところから話がスタートします。

これ、すごく面白かったよー。
原稿を探す過程も面白いのだけど、次々に妙なことが起こるから読んでてドキドキしちゃった。
そして後半、『あれっ!?あれあれ?』と思うシーンが。
瞬間、主人公と同じ気分になった。
これってきっと筆者の思うツボな反応なんだろうなぁ。
昔に読んだ折原一の本を思い出したよ。こういう操られ方って好きだわ。

そして、岡嶋二人の時からそうだったけど、この人の作品って引き込まれ度がめちゃくちゃ高い。
案の定、今回も夢中で読んじゃいました。
本当はもっとイロイロ書きたいんだけど、方向性だけでネタバレしちゃいそうなのでこの辺で。

2005/03/30 Wed | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 井上夢人

MISSING

MISSING
本多 孝好

おすすめ平均
記憶
やっぱりキレイです
人にとって、失う事とは
切ない・・
…。

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この人の作品は、初めて読みました。
「このミステリーがすごい!2000年版」の第10位だそうで、あちこちで評判も聞くし読んでみようかなあと。

裏表紙の抜粋からは恋愛物かもと想像していたんですが、そういうわけでもなかったです。

5作品収録されているのだけど、どれも余韻に浸れて好きな感じの内容。
(最後のはあまりピンと来なかったけども)

「ミステリー」で上位に食い込んでいるというのも読んで納得。
『えっ!』という展開がけっこうありました。

でも、驚かされてキモチイイというだけではないのです。
どの作品にも切ないというか物哀しい部分がある。
優しいんだけど哀しい。
で、読んだ後にじんわり来ちゃう。
こういう後味ってけっこう好みです。

長編も1冊買ってあるんだ。楽しみ。

2004/12/21 Tue | 本 > 日本の小説・エッセイ > は行 > 本多孝好

純愛カウンセリング

純愛カウンセリング

岡村 靖幸
ぴあ
単行本

まさか岡村ちゃんが本を出すとは・・・。
今年は、今までの沈黙が嘘だったみたいにイロイロで嬉しい限りです。

この本は、『純愛とは何か?』をテーマに、岡村ちゃんが対談の旅をしていくという内容。
「ときメモ」のプロデューサーやゲイバーのママ、スワッピング嗜好を持つ夫婦や精神科医、さまざまな職業の人々と対談を繰り返していきます。

岡村ちゃんが話している(文字だけど・・・)様子が新鮮なのはもちろんですが、内容もまた新鮮で面白かった。
普段接点のない人たちばかりだから、『こんな風に考えてるんだ〜』とか思いながら読んでました。
そして、対談相手がみんな素敵な人に思えたなぁ。
例えば田原総一郎に対して、食わず嫌いというと変だけど、あまり知らないのにちょっと嫌悪感があったんです。
でもこれを読んだら好感が。
よく知りもしないで嫌ったらダメですね。

それから、対談の中で、いろいろな本からの抜粋が岡村ちゃんの口から飛び出してました。
それは対談相手が書いた本に限らずで、随分本を読んでるんだなあって思いました。

読み終わって、私の中で岡村ちゃんの魅力が更に増しました。
帯に「愛とエロスとFUNKの貴公子、純愛を語る」と書いてあったけど、まさに(笑)。
あ〜ん、ますます好きになっちゃったよーっ。

「岡村靖幸」を知らない人でも興味深く読める内容だと思いますので、是非!

2004/12/13 Mon | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 岡村靖幸

電車男

電車男

中野 独人
新潮社
単行本(ソフトカバー)

読んじゃいました(笑)。
彼が会社の部長から借りてきたの。
部長も読むのか・・・。

前にお友達のリンクから飛んで少し読んだのだけど、あまりに量が多そうだったので途中で挫折。
やっぱりPCに張り付いて読むより、本の方がラクかも。
本はだいぶ削除されてるらしいから、それもあるのかな?

感動とかというより、書き込んでる人たちのやり取りというか独特の反応が面白かった。
途中何度かププッと笑っちゃいました。

実話かフィクションかはあまり気にならなかったなぁ。
想像してたより楽しんで読めました。

2004/12/10 Fri | 本 > 日本の小説・エッセイ > な行