感想文

本とか映画とかゲームとか。ネタバレはしないようにしています。

しゃばけ

しゃばけ

畠中 恵
新潮社
文庫

主人公は、廻船問屋「長崎屋」の一人息子、一太郎(若だんな)。でもこの一太郎、主人公だというのに弱〜いの。小さい頃から体が弱く、すぐに寝込んでは生きるか死ぬかの騒ぎにまでなったりして。だから大事に大事に大事に扱われていて、ちょっと咳き込んだだけでも外出禁止になってしまうほど。そんな若だんながある夜こっそり外出したら、なんと人殺しに出くわしてしまい…という所から物語は始まります。

長崎屋の手代として働きつつ若だんなのお世話をしている2人の男性、彼らは実は妖(あやかし)。他にも若だんなの周りには、幼い頃から自然にそばにいた妖たちがたくさん。若だんなは、彼らの協力を仰ぎながら事件のことを調べることに。

若だんながとっても弱っちいのにとっても危ない目に遭うので、読んでてドキドキしてしまう場面も。だけどそこが面白い所かもしれないなあ。そして妖たちは、怖いとかそういうイメージではなく、何だか可愛い印象。これも魅力。

ストーリーも面白いし、文章も読みやすい。これはシリーズ化されるのも納得です。今ダーリンが読み始めているのだけれど、「ハリー・ポッター読んでる時みたいな気分になった」と言っていました。ほんとそんな感じ。完璧じゃない主人公、不思議な存在(でも怖くない)、独特の世界。思い返してみて、かなり言い得ていたので思わず感心してしまったよー。

2007/05/02 Wed | 本 > 日本の小説・エッセイ > は行 > 畠中恵

ゲームの名は誘拐

ゲームの名は誘拐
4334738850東野 圭吾

おすすめ平均
starsよくできた誘拐もの
stars身代金受渡し後に山場が

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主人公は「佐久間」。
物語は、ずっとこの人視点で進んでいきます。

佐久間が、仕事上のあることで葛城に恨みを持つところから話はスタート。
彼は葛城の娘「樹理」と半ば偶然に出会い、狂言誘拐を実行することになります。

葛城も佐久間も、共に「ゲームにはいささか自信がある」と豪語する男。
樹理と共犯関係を結んだ佐久間は、ゲームに勝つことができるのか?

狂言誘拐の進め方、現金の受け渡しまでの駆け引き、かなりドキドキしながら読み進めました。
上手くいかないかも、どこかで失敗するかもと思うとやっぱり読んでいても緊張しちゃう。
犯罪者側の視点で描かれている作品って、読んでいる時のドキドキ度、すごいですよね?

で、ある決着を見せたところで少し一息ついたわけなのですが、まだページは3分の1ほども残っているの。
ああまだ終わらないんだなあ、この先はどうなるの〜?と、興味津々。
そこからはまたドキドキの展開でした。

面白かった。
善人がほとんど出て来ないんだけど、不思議と嫌な気持ちにはならず。
素直に展開を楽しめました。

2005/07/21 Thu | 本 > 日本の小説・エッセイ > は行 > 東野圭吾

MISSING

MISSING
本多 孝好

おすすめ平均
記憶
やっぱりキレイです
人にとって、失う事とは
切ない・・
…。

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この人の作品は、初めて読みました。
「このミステリーがすごい!2000年版」の第10位だそうで、あちこちで評判も聞くし読んでみようかなあと。

裏表紙の抜粋からは恋愛物かもと想像していたんですが、そういうわけでもなかったです。

5作品収録されているのだけど、どれも余韻に浸れて好きな感じの内容。
(最後のはあまりピンと来なかったけども)

「ミステリー」で上位に食い込んでいるというのも読んで納得。
『えっ!』という展開がけっこうありました。

でも、驚かされてキモチイイというだけではないのです。
どの作品にも切ないというか物哀しい部分がある。
優しいんだけど哀しい。
で、読んだ後にじんわり来ちゃう。
こういう後味ってけっこう好みです。

長編も1冊買ってあるんだ。楽しみ。

2004/12/21 Tue | 本 > 日本の小説・エッセイ > は行 > 本多孝好

放課後

放課後
東野 圭吾

おすすめ平均
古いかな・・・
予想出来ない犯人像
記念すべきデビュー作
最後のどんでん返しは一品
推理モノとしてはどうかと・・・

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主人公は女子高の教師である「前島」。
命を狙われているような出来事がいくつか起こった後、別の教師が殺されてしまいます。
さて、犯人は誰??

設定は特に珍しくない感じ。
密室トリックが出てきたり、アリバイの有無が問題になったりと、正統派の推理小説だなぁと思いながら読んでました。
しかし、怪しい人物が次々に登場するので、犯人がなかなかわからない。
普段は、推理小説を読んでいてもあまり犯人を想像しながらということはしないんですが、今回は『この人かも?』『この人もアヤシイぞ』と珍しく手を止めてあれこれ考えちゃいました。

デビュー作ということでそれほど期待していなかったのに、読み終わった後は大満足。
さすがだなーと思ってしまいました。

読みやすく、面白かったです。
トリックよりも、動機の方が意外でビックリされられたかも?

2004/09/10 Fri | 本 > 日本の小説・エッセイ > は行 > 東野圭吾

予知夢

予知夢
東野 圭吾

おすすめ平均
軽〜いタッチの短編集。寝る前に最適!
テレビドラマっぽい
オカルト満載
『探偵ガリレオ』と比較すると・・・
表紙に魅かれた。

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タイトルで既に心惹かれていました。
夢にはすごく興味があるし、夢にまつわる不思議な話とかも大好きなので。

この作品は5つの短編が入っている連作ミステリーです。
そのうち夢がかかわっているのは2つなんですが、どれも面白かったです。
章ごとのタイトルの付け方も、ちょっと変わってて好き。
殺人事件が起こるところまではそう珍しいストーリーではないのだけれど、不思議なことがからんでくるのです。
事件が起こる「前日」に事件を目撃していたと語る女の子や、ちょうど殺された頃の時間に別の部屋に現れていた被害者、住人亡き後ポルターガイストが起きる部屋などが登場。

どれも説明がつかないことだけに、刑事の「草薙」は戸惑いを感じます。
そこで相談をする相手として登場するのが、物理学者の「湯川」。
この作品では、刑事さんではなく物理学者が謎を解くのです。

湯川は話を聞いた時点である仮説を立て、後日それを実証してみせます。
それは、今までの捜査方針や状況が引っ繰り返ってしまうような内容。
読んでいる方としては、この展開がすごく面白かったです。

私は、霊感は多分ないんですが、予知夢(というか透視夢?)は見たことがあります。
だから不思議なことは現実に起こるんじゃないかと思っている方なんですが、湯川教授の説明は論理的でスッキリ説明してくれたから、何だか気持ちがよかったな。

ひとつひとつは短い時間で読めるし、通勤時間や待ち合わせの時なんかに読むのにオススメ。
今まで読んできた東野圭吾作品は長編が多かった私。
深みがあって好きだったんですが、短編は短編でまたいいなぁと思いました。

2004/08/25 Wed | 本 > 日本の小説・エッセイ > は行 > 東野圭吾

白夜行

白夜行
東野 圭吾

おすすめ平均
著者の代表作のひとつと言える
白夜の人生と闇黒の道程
昨日読み終えて・・・
悪女になるなら月夜はおよしよ
初めて読んだ東野圭吾作品です

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文庫で厚さが約3cm、854ページとかなりボリュームがあります。
にもかかわらず、残り半分は我慢できずに一気に読んでしまいました。
明け方まで本を読んだのなんて本当に久しぶりです。
それくらい、面白かった。

発端はひとつの殺人事件。
とは言え、単にその事件の犯人を捜していくだけの推理小説ではありません。
展開も年月の経つスピードも速いし、最初の殺人以外の事件も次々に起こります。
面白いのは、章ごとに違った人物からの視点でエピソードが描かれていき、読んでいく内に関係が次々とつながっていくところ。
中でも、ある2人の人物をめぐるつながりが際立ってくる。
この、段々つながっていく感じ、連鎖していく感じが気持ち良いのです。

更に、犯人が誰だかまったくわからない状態ではなく、何となく『この人は関係あるに違いない』というのを匂わせながら話が進んでいく感じです。
それが一体どんな風に判明するのか、または判明しないで終わるのか・・・といったことが気になって気になって。
ページをめくる手が止まりませんでした。

そして、今までの東野圭吾の作品にはなかったような暗さ。
哀しいのです。
ただ、不思議なことに読後感は悪くありませんでした。
犯人の心に、確固たるものを感じていたからかも?

2004/06/26 Sat | 本 > 日本の小説・エッセイ > は行 > 東野圭吾

嘘をもうひとつだけ

嘘をもうひとつだけ
東野 圭吾

おすすめ平均
犯人だけを責められない。
切なくなる短編集
トータルコンセプトとしての完成度が高い作品
嘘はつけないものですね。
悲しい4つの事件+1

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5つのお話が収録されています。
「連作」といった感じで、ある1人の刑事がどの作品にも登場してきます。
ただ、視点はその刑事からのものではなく、事件に関わっている人の行動や感じ方で書かれています。
読んでいるうちに『こういうパターンか〜』とわかるのですが、それでも楽しく読めました。
ひとつひとつが短めだし(50〜60ページくらい)、それぞれ独立した事件なので空いた時間に少しずつ読むのもいいかなと思います。

謎解き自体は特別アッと驚くような物ではありませんでしたが、それよりも、犯人や周りの人の心理が読んだあと心に残りました。

2004/05/29 Sat | 本 > 日本の小説・エッセイ > は行 > 東野圭吾

秘密

秘密
東野 圭吾

おすすめ平均
2つの秘密
切ない物語
広末涼子主演「秘密」の原作
失くしたくない思いがここにある!
不覚!そして深く泣く

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映画化された時に気になっていたんだ。
文庫になってすぐに読みはじめたんだけど、その時は入り込めずに途中でやめちゃったの。
読んだ時期が悪かったかも、不安定だったし。

で、改めて読んでみたんだけど。
泣いた〜!
しゃくりあげるほど泣いちゃいました。
妻と娘がスキーバスの転落事故に巻き込まれてしまって、娘だけが一命を取り留めるの。
しばらくして意識を取り戻すのだけど、その意識が死んだ妻のものに変わってしまっていることがわかるんだ。
父であり夫でもある平吉は、その不思議な状況に途惑いつつも妻が死んではいないということを嬉しく思ったりもして。

でも生活をしていくうちに、お互いにいろいろと苦悩が出てくるの。
それがね、読んでいて胸がキューッって苦しくなるほど切ないんだ。
現実には起こらないような設定なんだけど、気持ちがすっごく伝わってくるからすごく感情移入しちゃったんだよね。
自分に子供がいたらもっと胸が締め付けられちゃったかもしれないな。
後半は涙、涙でした。
かなり泣いて一段落したあと、最後にまた泣いちゃう場面があったりするし。
それに加えて平吉のその後の生活を想像するとこれまた胸が苦しくなっちゃう。

最後の部分がない方が読後感はスッキリしてたかなぁとも思うけど、タイトルが「秘密」になるにはやっぱりああいう風に終わらないといけないのかしら。

読んだ後も平吉の気持ちを思ったり別の真相はないのかしらと考えたり、しばらく余韻に浸ってしまった本でした。

2003/04/11 Fri | 本 > 日本の小説・エッセイ > は行 > 東野圭吾