感想文

本とか映画とかゲームとか。ネタバレはしないようにしています。

エンジェル・エンジェル・エンジェル

エンジェル・エンジェル・エンジェル
4101253358梨木 香歩

おすすめ平均
starsなんて優しい筆致で厳しいことを書くのだろう
stars神様の気持ちとは
stars不思議な2つの世界
stars梨木さんは文庫本がよく似合う・・・
stars中編もスペシャルな作家の中編代表作品。

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文庫の厚さは割と薄め、字も大きめなので、読む前は児童書風なのかと思ってました。
でも、梨木香歩ワールドな雰囲気は確かに感じたのだけれど、私が今までに読んだ作品とは少し違ってました。

主人公は、進学校に通うコウコと、ほとんど寝たきりで過ごす「ばあちゃん」。
コウコは「ばあちゃん」のトイレを手助けすることになるのですが、あるきっかけで不思議な現象が起きるようになります。

章ごとに、昔と今とを行き来しながら展開していくストーリー。
ばあちゃんが少女の頃のエピソードと、そこから派生しているであろうセリフ、現代でコウコと交わす言葉でのリンク。
これってきっと必然だったんだ。赦されるってことが必要だったんじゃないかな。
「本当のこと」はお互いにわからないままだったけれど、それで良かったんだろうなと思った。

テーマは思いのほか重いです。
だけど難解ではなく、自然とそこに思いを馳せることができました。
自分が許せない時、自己嫌悪に陥った時、この本を読むと救われる気がするんじゃないかなあって思いました。

2005/07/14 Thu | 本 > 日本の小説・エッセイ > な行 > 梨木香歩

西の魔女が死んだ

西の魔女が死んだ
梨木 香歩

おすすめ平均
やさしさに包まれる
私の心に一生残る本です
愛・自然
心の避難所
何かを教えてもらった

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とっても素敵な本を読んだよ。

主人公は”まい”という中学生の女の子。
学校に行きたくなくなってしまっているの。
ママの勧めで、まいは大好きなおばあちゃん(西の魔女)と1ヶ月間、生活を共にすることになる。
その1ヶ月間の様子が描かれてるんだけど、まいはそこでおばあちゃんから魔女修行の手ほどきを受ける。
魔女といっても魔術や呪術ではなくって、自分のことは自分でやるということや、規則正しい生活をするということ、自分の幸せは自分で決めるといったことが魔女にとってすごく大切だってことを教わるの。

おばあちゃんとジャムを手作りしたりベッドメイキングを教わったり、近くの森を散歩したり、花の名前を知ったり。
読んでいると、初夏の爽やかな感じとか「まい」がおばあちゃんのことを大好きな気持ちが伝わってくるんだ。

そして、、、。
タイトル通りおばあちゃんは死んでしまうし、帯に書いてある通り『最後の3行は涙が止まらない』。
だけど、死んでしまったことが悲しくて泣いたわけではなかったんだ。
感動というか、胸にこみあげるというか。
ネタバレしないように書くのって難しいけど、切なさと暖かさと優しさに胸がいっぱいで、涙が流れたという感じです。

小説を読んでグシュグシュと泣いたのはかなり久しぶり。
でも読後感はすごく良いです。
読んでみて!!

2002/01/01 Tue | 本 > 日本の小説・エッセイ > な行 > 梨木香歩

からくりからくさ

からくりからくさ
梨木 香歩

おすすめ平均
今までにない魅力
私の宝モノの本です
人生最高の1冊だと思う。
からく「りか」らくさ?
癒し?

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「西の魔女が死んだ」がとてもよかったので、続けて読んだよ。

主人公の蓉子が、亡くなったおばあちゃんの古ーい日本家屋で、同年代の女性3人と共同生活を始めるの。
その生活には、蓉子が小さい頃から一緒にいる「りかさん」というお人形も一緒。
しかも、今は眠っているけど「りかさん」は、話をするらしい。
最初はとまどった同居人たちだったけど、次第に「りかさん」がいることが自然なことになってくるんだ。
蓉子は食物や草木で糸を染めて過ごし、紀久は機を織り、与希子はキリムという織物に挑戦、マーガレットは鍼灸の勉強を続けている。
そんな4人の日常には当然「染め」のことや「織物」の話が多く出てくる。
織物にまつわる異国の話なんかも入ってくるから、少し難しく感じる部分もあったよ。

でもね、これは「西の魔女が死んだ」でも思ったことなんだけれど、その日々の生活の様子がとても気持ちよさそうなの。
網戸のない家で虫も多いけどそのぶん自然な風が吹き込んできたり、紀久の機の規則的な音を聞きながら読書をしたり、庭の野草を調理して食卓で味わったり。

かといって、のどかな生活だけを描いているだけではないんだ。
問題も起こるし、悩んだりもする。
「りかさん」を通して4人には意外なつながりがあることが判明していくし、4人それぞれの「流れ」のようなものにも変化が起こってくる。
後半には事件も起こるしね。

途中で出てくる能面の話は少し複雑で「のどか」とは言えないエピソードだし、「りかさん」というのは人形だけど話をする設定ということもあって、”誰にでもオススメ”って感じの本ではないかなぁ。
私の彼なんかは読みたがらない気がする。

ただ、私はけっこう好きなんだ、この本。
手作りのものにも惹かれるし、毎日の生活の様子も何だか好きなの。
時間がゆっくり流れてるような、せかせかしてない感じが好みなのかな。
それとも、この作者の文体が私に合ってるのかな?
恩田陸サンと並んで、いま気になっている筆者の一人です。

2002/01/01 Tue | 本 > 日本の小説・エッセイ > な行 > 梨木香歩