感想文

本とか映画とかゲームとか。ネタバレはしないようにしています。

記憶の国の王女

記憶の国の王女

ロデリック タウンリー Roderick Townley 布施 由紀子
徳間書店
単行本

主人公は、王女シルヴィ。『とてもすてきな大きなこと』という物語のヒロインなのだが、最近はちっとも読者が現れない。仮に現れて本が読まれても、同じことを繰り返して演じるだけの退屈な人生だ。そんなある日、久しぶりに本が開かれた。シルヴィは、決まりを破って読者を見上げてしまったばかりか、外の世界へと冒険に出かけてしまうのだった…。

予想では、物語の主人公が現実の世界に驚いたりハプニングに巻き込まれたりしながら大冒険をして、最後は元の世界に戻って幸せに暮らすのかなあとありがちなことを思っていた。だから序盤はそれほど入り込まずに読んでいたのだけれど、途中から一気に引き込まれた。思ってたのと違う。面白い。そんな所に行っちゃうの?というところでワクワクしたり、一体どうなってしまうの?幸せになれるの?と不安になったり。そして最後は泣きそうになった。うつりゆく切なさみたいなところでグッときてしまったのかも。

結末は私のとても好きな感じだったし、読み終えた後はものすごく満ち足りた気持ちになった。最初はあまりぴんと来ないなあなんて思ってあまり気を入れず読んでしまっていたから、もう一度読み返してみたいな。

2008/02/10 Sun | 本 > 児童書

ビビを見た!

ビビを見た! (fukkan.com)

大海 赫
ブッキング
単行本

またまた大海赫さんの作品を読んだ。

主人公は、生まれつき目の見えない「ホタル」という男の子。ある日、いきなり「目を見えるようにしてやろう」という声がして、本当に目が見えるようになった。ただし、限定7時間。それなら出来るだけたくさんの物を見ておきたいと願うホタルなのだけれど、ホタルの目が見えると同時に、今まで目が見えていた人の目は見えなくなっていたのだった。おまけに何か得体の知れない敵が攻めてきているという…。

他の大海作品同様、強い印象が残る本。『けころす(蹴殺す)』なんて単語が平気で出てくるし、やっぱり怖さはあるのだけれど、この作品は怖いだけじゃなかった。最後は何だか切なくなって泣きそうになった。子どもには強烈すぎる内容かもしれないけど、きっと何か感じると思うからいつかは読ませたいなあと思った。

2008/01/29 Tue | 本 > 児童書

メキメキえんぴつ

メキメキえんぴつ (fukkan.com)

大海 赫
ブッキング
単行本

大海 赫さんの本は本当に怖いな!

「メキメキえんぴつ」「大きく なったら、 なにに なる?」「アップルパイの つくりかた」「トーセンボー」「あなたの えらさは なんポッチ?」の5つのお話が収められている短篇集。

難しい漢字は使われていないし、ふりがなも振ってあるし、分かち書きもされているくらいだから小学校低学年の子でも読めると思う。だけどこれを実際に小学校低学年で読んだら怖くて夜も眠れないだろうな〜。特に「大きく なったら、 なにに なる?」「トーセンボー」のラストの恐ろしさといったら!

教訓や風刺の要素もあるんだけど、ちびっこ読者を突き放すような展開でホラー要素全開。シンプルなだけに強烈な恐怖感がある。でも面白い。試しに読んでみて欲しいなあ。きっとクセになると思う。

2008/01/20 Sun | 本 > 児童書

不思議を売る男

不思議を売る男

ジェラルディン マコーリアン Geraldine McCaughrean 金原 瑞人 佐竹 美保
偕成社
単行本

5年生の女の子エイルサは、ある日図書館で、MCCという男と出会う。MCCはエイルサの母が経営する古道具屋さんで住み込みで働くことになるのだが、お客さんが来るたび、商品にまつわる物語を語って聞かせるようになる。

この物語が面白いのだ。童話のようなテイストなのだけれど、切ないものもあれば怖いものもある。お客さんたちが話を聞き終えると商品に夢中になってしまうのも納得。どれも本当に引き込まれて読んでしまった。

もちろん、外側の物語(エイルサたちの世界)も面白い。本の世界からやって来たとおぼしきMCCについて、最後に意外な展開があって驚かされたし、その後はどんな風になったのかも気になって仕方ない。読み終えた後も余韻に浸っている時間が長かった気がする。物語の中に物語がある分、何冊も読み終えたような満足感があった。これは好きだなあ。図書館で借りたんだけど、自分で持っていたいと思える1冊。

2008/01/15 Tue | 本 > 児童書

チミモーリョーの町―クロイヌ家具店・続篇


『クロイヌ家具店』の感想を書く時に続篇が出ていると知ったので、続けて読んでみた。
あれから数年後という設定。主人公だったナナホシ・モエルが今回も主人公。

この本は怖いよー!
児童書の域を完全に超えてる感じ。
『クロイヌ家具店』も怖さはあったけど、まだファンタジーっぽい部分もあった。だけどこの『チミモーリョーの町』はもはやホラーだ。
初版が2007年だから、きっと最近に書かれたのだと思う。現代を風刺しているような魑魅魍魎たちが次々と出てくる。そして容赦のない展開。おそろしい。
町や登場人物の名前はファンタジーっぽいだけに何だか余計に冷え冷えとした怖さを感じた。

途中でやめられず、一気に読んだ。面白い。でも怖い。小学生とかが読んだら夜眠れなくなっちゃうかもしれないなあと思った。私も、寝る前に読んだら何だか気が高ぶってなかなか眠れなかったもの。

読み終えた後も、強く心に残る本。イマドキの子や今後イマドキを担う子たちが読んで、怖がりながらも何かを感じてくれるといいなと思った。そんな1冊。

2007/12/09 Sun | 本 > 児童書

クロイヌ家具店

クロイヌ家具店 (fukkan.com)

大海 赫
ブッキング
単行本

タイトルから、不思議な黒い犬が営む不思議な家具屋さんのお話かな〜とイメージしてたのだけど。
まったく違った。そういう楽しげなファンタジーではないの。
設定からして怪しさが漂っているし、怖さもある。

「ぼく」はある日、庭のシイの木にお気に入りの椅子をあげたのをきっかけに、新しい椅子を求め「クロイヌ家具店」へと出かけます。
さまざまな椅子が並ぶ中、「ぼく」は王さまの椅子に目を奪われる。
そこから考えられないような出来事が次々と起き、その後は徐々に恐ろしい展開に。
先が気になって、途中からはもっと早く読みたくてもどかしかったほど。

一応は児童書なんだと思うけど、こんなの小学生の時に読んだらインパクト強すぎるだろうな。
いや〜、でも面白いわ!
今知ったんだけど、続編が出ているみたい。読むぞー。

2007/12/05 Wed | 本 > 児童書

ドコカの国にようこそ!

ドコカの国にようこそ! (fukkan.com)

大海 赫
ブッキング
単行本

小学四年生のフトシの一番の悩みは、毎晩のねしょうべん。
しかし不思議な夢を見たある晩、初めてフトシはねしょうべんをしなかった。
フトシはその夢から導かれるようにして、『ドコカの国』を目指します。

一歩一歩『ドコカの国』に近付いていく過程は楽しいのだけれど、その道のりが大変!
私だったらもう絶対に挫けてる…と思いながら読み進めてました。
ワクワク半分、ハラハラ半分。

ラストの展開が意外すぎてびっくりしてしまった。
読みながら想像していた結末とは程遠かったの。
単なるほんわかエンディングではないのだ。
だからこそ、読後に強い余韻が残った。
これは一口に児童書とは言い切れないなあ。挿絵も著者が描いてるのだけど、これも独特の雰囲気を醸し出してるし。

ちょっとクセになる気がする。
他の作品も読むぞ!

2007/11/07 Wed | 本 > 児童書

わたしがふたりいた話

わたしがふたりいた話
4061470035手島 悠介

おすすめ平均
starsわたしがふたりいた話

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小学校の頃に読んだ本。再読しました。

自分の家の電話から自分の家の電話番号にかけてみると、当然お話し中を知らせる「ツーツーツー」という音が鳴りますよね。
ところが、このお話では違うのですよ。

主人公の「みどり」が、電話をかけるべき相手が見つからなくて何となくやってみたことでした。
お話し中の音で終わるはずだったのに、不思議なことが起こるんです。

読んだ当時は、すごく不思議でワクワクしつつも、ちょっと怖いような気分になったことを覚えています。
『ありそうでないけど、だけどもしかしてあるかも?』な不思議。
昔からこういうのが好きだったんだなあ、きっと。

いま読んでも楽しめました。
セリフの感じが小学生らしくない丁寧さなんだけど、「全国学校図書館協議会・選定図書」だということを考えれば納得かな?
先生への敬語の使い方とか、こういう本から知らず知らずに学んできたのかもしれないしね。

2005/05/25 Wed | 本 > 児童書

二分間の冒険

二分間の冒険
4036518801岡田 淳

おすすめ平均
starsノンストップな面白さ
stars面白い
stars二分間の冒険
stars日本のファンタジー
stars一番確かなものとは

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児童書です。
91年が初版のようだけど、書いた人が1947年生まれだからなのか、主人公は小学生なのに妙にセリフが古くさいです。
まずそれが最初に気になっちゃった。
でも大丈夫、すぐ慣れました。

小学六年生の「悟」は、体育館での作業を抜け出したところで黒いネコに出会います。
そこから二分間の大冒険のハジマリハジマリ。

冒険が始まる辺りまでは『ありがちなストーリーなのかな〜』なんて思ってたんですが、中盤からはかなり夢中で読んじゃいました。
児童書に属してるとは言え、侮っちゃいけません。
謎を解かないと冒険を終わらせられないのだけど、その謎は「この世界でいちばんたしかなもの」を見つけることなんだよ。
難しいでしょ?

登場する子供たちや老人たちの置かれている状況を読んでいると、思わず入り込んでしまいます。
竜との対決に向けての展開もドキドキしちゃうし。

戦いの最後も読み応えがあって、いやいや、チビッコだけに読ませておくんじゃもったいないなーと思いました。

2004/12/14 Tue | 本 > 児童書

チョコレート戦争

チョコレート戦争
4652005024大石 真

おすすめ平均
starsこんなエクレア食べてみたかった
stars私に読書の楽しさを教えてくれた思い出の一冊
starsチョコレート戦争はどう?

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小学校3年生の頃に読んだ本です。
覚えてないんだけど、表紙を開いたところにクラスと名前が書いてあったので。
更に裏表紙の内側には「12/31 ヨーカドーにて買う」と記してあったよ(笑)。
お誕生日プレゼントでもらったのかも?
この頃から美味しそうなタイトルに弱かったのかもしれないなぁ。

内容をまったく覚えていなかったので再読しました。
チョコレートの国に迷い込んで戦争になるのかなーなんて思いながら読んだんだけど、見当違いでした。
舞台は、とある地方の小さな町。
ある事件から、小学生たちが洋菓子店と戦うことになるといった内容です。

高級洋菓子店が出てくるのだけれど、その描写は、読んだ当時ワクワクしただろうな。
小学3年生といったらケーキの種類なんてほとんど知らなかったし。

近所に小さなケーキ屋さんがあって、そこの「ガナッシュ」というケーキが大好きだったことを思い出しました。
おばあちゃんが遊びに来る時いつも買ってきてくれてたの。
そのケーキ屋さんがお引越しして後にパチンコの交換所になった時にはガックリしたものでした。
・・・というのは余談ですが。

表紙に「全国学校図書館協議会選定 必読図書」というシールが貼ってあるので、きっと小学生にはオススメな内容なのではないかと。
字も大きいしテンポも良いから読みやすいし。
深読みすれば『力に訴えずに勝つ方法もあるんだよ』というようなテーマも含まれているのかもしれないけれど、最後はなかなかスッキリ終わるし楽しめる本だと思います。

2004/11/29 Mon | 本 > 児童書