記憶の国の王女
主人公は、王女シルヴィ。『とてもすてきな大きなこと』という物語のヒロインなのだが、最近はちっとも読者が現れない。仮に現れて本が読まれても、同じことを繰り返して演じるだけの退屈な人生だ。そんなある日、久しぶりに本が開かれた。シルヴィは、決まりを破って読者を見上げてしまったばかりか、外の世界へと冒険に出かけてしまうのだった…。
予想では、物語の主人公が現実の世界に驚いたりハプニングに巻き込まれたりしながら大冒険をして、最後は元の世界に戻って幸せに暮らすのかなあとありがちなことを思っていた。だから序盤はそれほど入り込まずに読んでいたのだけれど、途中から一気に引き込まれた。思ってたのと違う。面白い。そんな所に行っちゃうの?というところでワクワクしたり、一体どうなってしまうの?幸せになれるの?と不安になったり。そして最後は泣きそうになった。うつりゆく切なさみたいなところでグッときてしまったのかも。
結末は私のとても好きな感じだったし、読み終えた後はものすごく満ち足りた気持ちになった。最初はあまりぴんと来ないなあなんて思ってあまり気を入れず読んでしまっていたから、もう一度読み返してみたいな。