感想文

本とか映画とかゲームとか。ネタバレはしないようにしています。

これは王国のかぎ

これは王国のかぎ
荻原 規子

おすすめ平均
読み易い!
魅力的な登場人物たち
綺麗なオモチャ
純粋に楽しむ
久しぶりに気楽に楽しく読めました

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主人公であり語り手でもあるのが、「あたし」。
15歳の少女です。
文章の所々で話し言葉が使われているから、何となく誰かの話を聞いているような気分で読んでました。

内容は、児童向け?なのかな?
ファンタジーという感じのストーリーでした。

普通に暮らしていたのに、ある日を境に魔法使いになってしまった「あたし」。
出会ったばかりの「ハールーン」と旅をすることになりました。
魔法を開発しつつ進んで行く内に、いろいろな事件に巻き込まれていきます。

楽しく読み終えたけど、最後がちょっと物足りなかったというか寂しくなったというか。
だってハールーンが・・・。

2004/10/02 Sat | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 荻原規子

天国までの百マイル

天国までの百マイル
浅田 次郎

おすすめ平均
マリに泣かせられた。
中学生でも
ふと我に返って考えさせられてた
全ての人に読んで欲しい本
電車の中など人の目があるところでは読まないようにしましょう!

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主人公は、四十歳の「城所安男」。
一時は社長として贅沢な暮らしをしていたものの、バブル崩壊で倒産。
自己破産、離婚と続き、別れた妻への仕送りは養育費含めて月々30万円。
どうにもならない日々を送っています。

そんな時、母が倒れて入院し、このままでは命が危ないことが判明するのです。
日本一の腕を持つという教授も匙を投げるような病状。
そんな中、千葉にあるサン・マルコ病院ならもしかして・・・ということに。
しかし、兄弟たちは、金は出すから勝手にやれといずれも薄情。
そして安男は、誰にも頼らず一人で母を病院に運ぶことを決意するのです。

母とのやりとりや、道中での優しい人たちにグッと来てしまいます。
胸が詰まるような気持ちで読み進め、ティッシュが必要になる場面もちらほら。

サン・マルコ病院の人たちはみんな魅力的で、こんな病院があったらいいなあとつくづく思ったよ。

私事ですが、ちょうど1年前、彼のお母さんが倒れました。
ICUに入り、一度はとても危険な状態に。
そして、治療費って、本当に高いんだなあと思った。
そういうことがあったので、何だか主人公に親近感を持っちゃいました。

安男の兄弟たちは、お金や地位があるから母親のことを忘れちゃっているんです。
貧乏だった子ども時代や、母の苦労を顧みないのです。
安男はそれを間違っていると思うけれど、母はそうじゃないと言う。
母の思いと子の思い。
読んでいて、どちらも理解できるような気がしました。

お金があれば大抵のことはできる。
なければ、お金で買えない大事なものを感じられる。
どちらが幸せなのか?
読み終わった後も、しばらくボーっと考えちゃいました。

それともうひとつ。
「マリちゃん」という女性が登場するんですが、彼女もとても魅力的でした。
でも、すごく切なかったです。

2004/09/26 Sun | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 浅田次郎

ライオンハート

ライオンハート
恩田 陸

おすすめ平均
とてもせつない物語
すばらしい!!!
何度も出会いながら決して結ばれない
幸福と悲しみ、その最後に待つものは…
不完全燃焼・・・

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「ライオンハート」と言えばSMAPだけど・・・。
ケイト・ブッシュというイギリスの歌手の歌から来ているみたいです。

この作品のジャンルは、何て言えばいいんだろう。
恋愛でありSFであり、ミステリーも入ってきたりする。
そして、舞台は日本ではありません。
登場人物も、然り。
ページをめくるとすぐに、カタカナの名前や地名が出てきたので少し意外でした。

海外の小説って、人名も地名もカタカナだし長いしで、実はちょっと苦手なんです。
覚えられなくて何度もページを戻して確認したりしちゃうの。
だから最初は、読むのに時間がかかりそうだなーと思ったりしてました。

この作品では、更に複雑。
軸となる土地はロンドンやパナマなどあちこちに渡っているし、時間も1600年代だったり1900年代後半だったり。
それでも、作者が日本人だからか私の好きな恩田陸だからか、手が止まることなくスムーズに読めました。
何となく海外小説っぽい語り口になっているような気がしたんだけど、それは気のせいかなー?

時と場所を越えて何度もめぐり合う2人。
やっと逢えても一瞬、時には逢えないこともある。
しかしそれでも、2人は強く強く求め合っているのです。

こう書くと、もしかして陳腐な印象を持たれてしまうかもしれないけれど、不自然だとかあり得ないだとかいう思いは湧いてきませんでした。
求め合う理由や次はどんな風に出会うのかなどが気になって、どんどん読み進めてしまいます。

生きる意味、出会う意味。
切ないけれど、何だかスゴイなぁと思ってしまいました。
こういう物語、私は好きです。

それから、各章の扉にある絵も、内容と関連性があって魅力的。
途中で何度か見入ってしまいました。

2004/09/12 Sun | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 恩田陸

天帝妖狐

天帝妖狐
乙一

おすすめ平均
感動の渦
ジェイブックス版は読んでないんだけど
乙一の筆致健在
トイレのタバコさん
天帝妖狐 ??

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久しぶり(1年ぶりくらい?)に乙一作品を読みました。
表題作「天帝妖狐」と「A MASKED BALL―及びトイレのタバコさんの出現と消失―」の2作が収録されてます。

「A MASKED BALL」の方が最初に入っているのでコチラから。
キッカケは、トイレの落書き。
高校生の主人公「ぼく」は、ほとんど誰も使っていないだろうと思われるトイレで一服するのが習慣。
ある日、壁に落書きを見つけ不思議に思っていると、翌日には別の人物たちからの落書きが書き込まれていたのです。
そこで「ぼく」も落書きに参加するようになり、いつしか伝言板のような雰囲気に・・・。
そして、その中で最も得体の知れない感じのしていた人物が、構内で事件を起こし始めるのです。
トイレの壁で言葉をやり取りするという設定。
中学生の頃、理科室の机でそんなことやったなぁとか思い出しました。
やっぱり何人かいて、それぞれ好きな歌の歌詞を書き付けてみたり。
ペンじゃなくて鉛筆だったけど。
ある日いっぺんに消されちゃってて寂しく思ったんでした。

まあこれは余談でしたが。
姿の見えない人たちとトイレの壁でつながってる感じが楽しめました。
「アイツ」は誰なのかというのが気になるし、展開も早いので、あっという間に読めると思います。

続いて「天帝妖狐」。
ちょっとホラーな要素があったのが予想外でした。
最近ホラー離れしていたので『うぅぅ』と思うシーンもありましたが、最終的には切ない物語です。
永遠の心の苦しみを、たったひとつの優しさが救う。
ホラーっぽい面がありつつ切ないというのがこの作品の醍醐味なのかなぁとは思うのですが、どうもこういうお話は私には怖くて、そっちの方が気になっちゃってました・・・。
ホラー自体は苦手じゃないんですけどね。

2004/08/27 Fri | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 乙一

チルドレン

チルドレン
伊坂 幸太郎

おすすめ平均
読書でこんなに癒されるなんて・・・。
これまで感じたことが無い感動。
いつも思う
シリーズ化を望む!
読んで欲しい

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5つの短編からなる連作集です。
・・・が、筆者があとがきで「一つの長い物語として楽しんでいただければ」と書いているように、長編だよね?と思えるようなまとまりがありました。

一つ目の作品「バンク」だけ、いくつかの章(というか節?)に分かれています。
それぞれに小タイトルがついているんですが、その命名の仕方がツボでした。
こういう言葉遊びって大好き。

登場人物も魅力的。
目立っていたのは、盲目ながら的確な推理を見せる「永瀬」と、メチャクチャやっているようで奇跡を起こしてしまう「陣内」。
2人とも、セリフや行動に意外性がある。
でも無理がないんです。
永瀬の小気味好い推理は読みながら嬉しくなるし、陣内の言動も痛快。
何より素敵なのは、2人ともすごくあったかいの。

どの作品も最後にはピッタリと納まるので、『そういうことか〜』とスッキリ。
それでいて温かい気持ちにも浸れる素敵な作品でした。

余談ですが、私はどうも名前から人をイメージしてしまう癖があるみたい。
「伊坂幸太郎」さんも、もっとお年を召した方なのかと・・・。
お若い人だったんですねー。
2つしか違わないとは!意外でした。
でも、写真を見たら、作品から感じていた通りの優しそうな印象。
『やっぱりねー』と思っちゃいました。

2004/08/24 Tue | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 伊坂幸太郎

くらのかみ

くらのかみ
小野 不由美

おすすめ平均
ざしきわらしのいる夏休み
死人ゲーム(四人ゲーム)で座敷童子出現?!
学校図書館を思い出しました。
親子、孫まで読ませたい本
作者の意図を考えて読む本

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親の用事で親戚のお屋敷に集まった子どもたち。
蔵の中で「四人ゲーム」を試したら、終わった後に、子どもが一人増えていた!
・・・という、不思議な事件から始まる物語です。

座敷童子、古い井戸、底なし沼。
古くからあるお屋敷とその周辺には、様々な言い伝えが残っています。
そして、それを実証するかのような事件が次々と起こるのです。
霊の仕業とも人間の犯行とも思えるような数々の怪事件。
放っておけば命の危険だってあるのに、大人はまったく当てにならない。
子どもたちは自分たちの力で犯人を捜そうと考えます。


この作品は、講談社の「ミステリーランド」という企画で、第一回目配本として出版された作品です。
「かつて子どもだったあなたと少年少女のための-」という謳い文句通り、大人も子どもも楽しめる内容ではないかと思いました。

謎を解くのは子どもだけれど、少しずつながら確実に真相に近付いていく様子が気持ち良かったです。
最後は「そうだったのかー!」と思う展開もあり、楽しんで最後まで読めました。
小野不由美ってこういうのも書くんだねという新鮮さもあったなぁ。

あ、イラストは「コロボックル物語」の人でした。
何となく得した気分になったりして。

「ミステリーランド」は、各回3冊ずつ、3ヵ月ごとの配本です。
装丁もちょっとカッコイイ。
執筆陣がすごく豪華なの。他のも早く読みたーい!

2004/08/20 Fri | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 小野不由美

うつくしい子ども

うつくしい子ども
石田 衣良

おすすめ平均
どこか透明感のある文章
うつくしい本
飽きのこないダブルキャスト
innocent
殺人犯の家族の視点

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静かな街で、9歳の女の子が残忍なやり方で殺される事件が発生。
やがて犯人として「補導」されたのは、13歳の少年でした。
この事件は、毎日のようにニュースやワイドショーで取り上げられます。
少年法についての論議が巻き起こり、動機についての推測があちこちに書かれる。
全国の注目を集めるような大事件です。

さて、少年には、一つ年上の兄「ジャガ」がいます。
事件が起こった日から、ジャガの生活も一変してしまいました。
両親は離婚せざるを得なくなり、引越しも余儀なくされてしまう。
しばらくは、記者の取材やいたずら電話が絶えることはない・・・。

それでもジャガは、傷つきながらも負けませんでした。
弟の心の内を探ろうと、奔走し始めるのです。

物語は、兄である「ジャガ」と新聞記者「山崎」、2人の視点から描かれています。
しかし、ストーリーが進みドキドキする展開になるにつれ、「ジャガ」からの視点が増えてきました。
子ども目線だからなのか、ドキドキ感も倍増です。
そんな風だから、どんどん読み進めてしまいました。
とても面白い本だったけれど、難しいテーマが隠されているんだろうなとも思います。

まず、殺し方の残忍さと犯人の年齢の低さ。
数年前の事件を思い出させられました。
間違いなく筆者もあの事件を意識して書いているんだろうなと思います。

タイトルは「うつくしい子ども」ですが。
「うつくしい」って何だろうって思った。
顔だけ美しくたって、中身はそうじゃないこともある。
一見すべてが美しいように思えても、見えないところで歪んでいることもあるでしょう。
その歪んだ部分こそが本人にとっては「うつくしい」かもしれないし。
大人の価値観で「うつくしさ」を求めたら、個性を潰してしまうってこともあり得る。
かと言って「個性」=「犯罪」になっても困るしなぁ。

・・・といった感じで、しばらくグルグルと考えさせられる作品でした。

2004/08/19 Thu | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 石田衣良

四日間の奇蹟

四日間の奇蹟
浅倉 卓弥

おすすめ平均
タイトルが間違ってない?
千織に惚れました
泣けなかったけど、いい話です。
泣きました;;;
ドキドキあっという間

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『このミステリーがすごい!』の第1回大賞金賞受賞作です。
”ある人気作家の作品(敢えて書きませんが)と設定が似ているけど良い”という前評判をあちこちで聞いていて、割と前から気になってました。

似た設定だということは気にせず読もうと思っていたのですが、読み始めてみるとやっぱり気になっちゃってました。
いつ出てくるのかというのが常に心にあるような感じで・・・。
真ん中辺りまでその設定が出て来なかったのでちょっと意外でした。

でも、面白かったです。
先に世に出ていた方の作品は、読後にかなり切ない余韻が残ったのですが、こちらは爽やかな感動を置いていってくれたという印象でした。
もちろん途中には、切ない要素も悲しい要素もツライ要素もあるんです。
それが、最後には素敵な状態で終わっている。
私は涙までは流れなかったんですが、読む人によっては泣けちゃうんじゃないかと思います。

確かに設定は似ていて、あの作品を読んだことのある人なら間違いなく連想してしまうだろうなあという感じは受けました。
あまり見かけない設定だから余計に。
でも、盗作だとかパクリだとかの悪印象はない。
それよりも、設定が同じでもまったく違う作品になるものなんだなあと逆に感心してしまいました。

2004/07/14 Wed | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 浅倉卓弥

博士の愛した数式

博士の愛した数式
小川 洋子

おすすめ平均
心があらわれます。
博士の魔法
数字に対する見方がかわる本です
久しぶりにあたたかい風を感じた。
涙が止まらない〜!

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すごく好きだなぁと思いながら最後まで読みました。
主な登場人物は、80分しか記憶を維持できない博士とその家でお世話をする家政婦、家政婦の子「ルート」。
会話のやり取りの中で数字や数式のことがあちこちに書いてありますが、小説として難しいとか数式が理解できないということはありません。

最初の方で「博士」と「私」に「友愛数」という共通点が発見された時、すでにこの小説に対して好感を抱いていました。
一見意味のない数字の一致、これに感動を覚えたりするところが私のツボにハマってしまったみたい。
例えば私の誕生日は12月31日なのですが、時計を見て12:31だったり前を走っている車のナンバーが1231だったりすると何となく嬉しいのです。
そういう感覚を共有したような気持ちになりました。

数式の気持ちよさや美しさ、なぜか読んでいるうちに涙が出そうな感動を覚えていました。
登場人物の言動や気持ちの移り変わりじゃない部分でこんな気持ちになるなんて、自分でも何だか不思議な感じでした。
数式を美しいと思う感覚や、博士の数字に対する愛情に共感を覚えたのかも。

「素数」の話が出て来た時、『もしかして私の誕生日「1231」と彼の誕生日「1211」は両方とも素数かも?』と思いついてウキウキしてしまいました。
最後に検証したら当たっていたのですっかり嬉しくなりました。
やっぱり運命なのね〜♪とか思ったり(笑)。
でも、公式に当てはまるからと言って逆は真じゃないのよね。
そう思ってよく考えたら、1211は7で割り切れた・・・。
わーん偽素数だったよー。
そういうところも面白かったりするのだけど。

かつて文章題とか因数分解が大好きで、気持ちいい答えが出た時は晴れ渡るようなクリアな快感があったなぁというのを思い出しました。
中学数学までの記憶しかないけど、やっぱり数字って素敵だなあと思いました。

もちろん数字がらみの話だけではなく、80分ごとに1975年の記憶にリセットされてしまう博士と親交を深めていく様子も読んでいて温かい気持ちになりました。
読後の余韻もいい感じで、かなり好きな方に入る作品だと思います。

因みに彼は、「家政婦」と読んだ瞬間に「市原悦子」を想像して読み進めてしまったそう。
途中で案外若いらしいということが判明して、イメージのやり直しだったと言ってました。
私はその話を彼から聞いていたからそういうことはなかったのだけど、そうじゃなかったらやっぱり「家政婦」=「市原悦子」かなー(笑)

2004/06/17 Thu | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 小川洋子

くじらの降る森

くじらの降る森
薄井 ゆうじ

おすすめ平均
やはり・・・

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最初の感じでホンワカなお話かと思っていたのですが、後半の展開ではちょっと重さを感じるストーリーでした。
何て言えばいいのか、感想を書くのが難しいな。
今までに読んだことのないタイプかも。

ここに出てくる人たちは皆、「常識人」と呼ばれるようなタイプからはどこか外れている部分があります。
誰にでもそういう所はあると思うけれど、その外れている部分が際立って描かれている感じ。
登場人物たちは、それぞれその部分を大切に生きているんだなと思いました。

裏表紙には「心を癒してくれる現代の神話」と書いてあります。
たしかに神話っぽいイメージがあるかも。
でも、ただ単に癒されるという内容ではありませんでした。

キディランドに置いてある「くじら」の商品の記述や、シンタロウがマサルを見つけられずに戻ってきた時の「くじら」のありかの表現は、実験的だなあとは思ったけれど私はあまり好きではないかもしれない。
表現の方法ばかりに気を取られて、読み飛ばしたような状態になっていた気がします。

この作品は2作目(1991年単行本化)だそうなので、他の物(特に最近の)も読んでみたいなあと思いました。

2004/06/15 Tue | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 薄井ゆうじ