感想文

本とか映画とかゲームとか。ネタバレはしないようにしています。

二重螺旋の悪魔(上・下)

二重螺旋の悪魔〈上〉
梅原 克文

おすすめ平均
圧倒的スケールを感じられます
文句なし
実写で見たい。。。


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二重螺旋の悪魔〈下〉
梅原 克文



主人公は一人の男性。
人間のDNAに隠されているある情報を呼び出してしまったがために、未知の化け物と闘うことになってしまいます。

この作品は三部構成になっていて、上巻では第一部と第二部、下巻では第三部が収録されています。
第一部では未知の化け物「C」(後に「GOO」)との出会いや闘い、第二部では「C」の中でも特に手強い「ダゴン102」を倒すため主人公が「UB」という半不死身状態になって闘っていく姿が描かれています。
そして第三部では何年か後という設定。GOOとの全面戦争、更には神との関係まで明らかになってきます。

近未来のような雰囲気の中でハラハラした展開が続くので、飽きずに読めました。
恋愛感情もところどころに入ってくるのでそちらの方も気にしながら読んでいたかも。
主人公以外の登場人物も、それぞれにお茶目な部分があったりして魅力的でした。

ちょっと気になったのは、前半の地の文に「!」がよく出てきたこと。
見慣れないので何だか不思議な感覚でした。

あとは2ヶ所ばかり展開が読めてしまったのが残念だったかな。
『絶対こうなんだよ』と思っていたところがそのままそうだったので少し物足りない気持ちでした。

でも全体としては想像を超えたストーリーで面白かったです。
長編だから読み応えもあったし。
これでもかというくらい次々に事件が起こるのでドキドキが途切れません。
ホラー物は久しぶりに読んだということもあって新鮮でした。

2004/05/11 Tue | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 梅原克文

月の影 影の海(上・下)

月の影 影の海〈上〉十二国記
小野 不由美

おすすめ平均
陽子に感情移入する
痛快!
シリーズ中、『魔性の子』に続いて面白かったです
赤毛の少女の心の旅
おもしろい!!

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月の影 影の海〈下〉十二国記
小野 不由美



タイトルはマンガの「海の闇、月の影」とかぶって混乱してしまいますが。

雑誌でひたすら絶賛されていたので読んでみました。
架空の十二国の物語。
その雑誌で『東洋のファンタジー』と言っている人がいたけど、まさにそんな感じ。

架空の国だし、架空の動物がでてきたりするところから見ても間違いなくファンタジーではある。
だけど設定がすごく緻密。
どんだけ練りこんでから書けばこんな話ができるんだろう?って思うくらい。
こういう話を思いつく脳みそがステキ。

読み始めてすぐに引き込まれちゃって。
難しい言葉がでてきたり理解するのに戸惑う場面もあるんだけど、それでも面白く面白く読み進められます。

それと、表現がすごく多彩。
こんな日本語もあるんだって感心したり、きれいな表現だなーって感動したりする。

サブタイトル(?)に『十二国記』と謳っているだけあって、
これはシリーズものです。
この「月の影 影の海」を第一部だとすると、現在第七部まで刊行されてます。

私はいま第三部に突入したところなんだけど、相変わらず面白いし
表現の仕方も冴えっぱなしという感じ。
いい本見つけちゃったなー。嬉しいなー♪
んも〜、どんどん読みたい!

2003/02/13 Thu | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 小野不由美

砂の女

砂の女
安部 公房

おすすめ平均
徹底したリアリズム描写!
安倍公房の最高傑作!!
恐ろしい閉塞感
蟻地獄人間版
シュールレアリズムの真髄

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昆虫好きな男が新種の発見を目指して旅に出るんだけど、目的地は砂丘。
砂の中に沈んでいるような村に到着するんだけど、男は村の人間たちの陰謀で、砂でできた大きな穴の中に軟禁されてしまうの。
穴は大きくて、そこには家が一軒、女が一人。
何しろ砂だらけで家中ザラザラ、御飯もザラザラ。
砂は湿気を持っていて、毎日「砂かき」をしないと重みで屋根が落ちる程。
そこから脱出するために、男はいろいろと作戦を立てては決行してみるもののこれがなかなか上手くいかない。

ザラザラ感の描写がリアル。
想像して嫌〜な気分になりつつも、気になるストーリー展開なのでどんどん読んじゃいます。
昭和37年に刊行と書いてあるから割と古いのかなって思うけど、内容は新しいっていうか心理ホラーみたいな感じを受けたよ。
読んでて『怖〜い』って思った。
『火とか水も怖いけど、砂も怖いんだなぁ』って。

「生きるとは」「生活とは」みたいなテーマが含まれてるんだろうとは思うけど、あんまり深く考えずに楽しく読んじゃいましたー。

あと、『これは絶対に誤植だー』ってところを1ヶ所発見してしまったのでそれが気になって仕方ないのでした。

2003/01/05 Sun | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 安部公房

暗いところで待ち合わせ

暗いところで待ち合わせ
乙一

おすすめ平均
切なくて、優しいです!
イイ!!
そんなジャンルにわければいいのか?
白乙一
タイトルと装丁が・・・

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「乙一」なんて何だかヘンテコな名前ですけど。
最近話題になっているので読んでみました。
2002年最後に読んだ本です。

目が見えないミチルと、殺人者として追われているアキヒロの奇妙な共同生活のお話です。
普通の共同生活と違うのは、アキヒロがこっそり住みついてしまっているという所。
2人の心情の変化を追っていくのを楽しみながら読んでいたんだけれど、最後にはちょっと意外な展開もあったりして一気に読み終えちゃいました。

特に難しい表現もないし、設定も奇抜だけどわかりやすい。
それだけに何だかぐいっと引き込まれます。

他にはホラーを多く書いている人のようなんだけど、これはホラーではないし、読後感もけっこうよかったりしてなかなかオススメですよー。

2002/12/01 Sun | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 乙一

チグリスとユーフラテス(上・下)

チグリスとユーフラテス〈上〉
新井 素子

おすすめ平均
まず文体で
生きることの意味
題名に魅かれて
繰り返し読みました。

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チグリスとユーフラテス〈下〉
新井 素子



『生きてきたことには意味がなかったし、これからの人生にも意味がない』、ということが判らされてしまったらどうしますか?
物語の主人公たちは、長い長い眠りから目覚めた後、この現実を目の前に突きつけられていくのです。

新井素子の長編。
この人の本は高校生の時よく読んでいたんだけど、語り口がすごく独特でかなり脳裏に残るの。
続けて読むとしつこく感じてしまうのよね。
今回はタイトルに惹かれたのと、『長編だとどうなの?』って気持ちから、久しぶりに手に取りました。

独特な口調は相変わらずだけど、ストーリーの内容は新鮮で面白い!
展開も興味深くて、どんどん読んじゃいました。

ジャンルはSF。
とはいっても小難しい理屈はナシ!スムーズに読めると思います。
どちらかといったら、心理描写が多いかも。

内容をひとことでいうと、「地球からの移民たちで作られた”ナイン”という星の栄枯盛衰」という感じ。
SFというと、宇宙に着くまでの苦労だとか技術的な内容だとか、行ったら未確認生物がいたりだとか、そんなイメージがないですか?
でもこれは違うのです。
SFだけどSFじゃないというか。

上巻では、ナインという星がいかに栄え衰えてきたかということが主人公の女性たちの目を通して描かれていて、下巻では、ナインの女神『レイディ・アカリ』と最後の子供『ルナ』のやり取りが続きます。
途中には『レイディ・アカリ』が移民してきたイキサツや女神になるまでの話なんかもちりばめられていて、後半とはいえ飽きずに読めますよー。
あ、でも少し、描写の繰り返しが気になる部分もあるかも?

読んだ後には、主人公たちの生き方を思い返してみたり
アカリの気持ちを思ってみたり、何となく考えさせられるストーリーでした。
でもあからさまに問題提起されてて重いというわけではなくて、根底のテーマなのかな?って感じです。

2002/01/01 Tue | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 新井素子

東京セブンローズ(上・下)

東京セブンローズ〈上〉
井上 ひさし

おすすめ平均
本当に大切なもの
おもしろい!かつ勉強になります
日本語の素晴らしさを再認識

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東京セブンローズ〈下〉
井上 ひさし



第2次世界大戦の頃のお話。
昭和20年の4月からスタートします。

日記調で物語が進むんだけど、漢字が当時の字体で書かれているのでけっこう難しい。
読むのにちょっと苦労するかも。

でもね、たとえば、「臺」という漢字だけ出てきたらなんじゃこりゃぁって感じだけど、文章の流れで「臺所」「番臺」と出てくれば今でいう「台」だなって理解できる。
想像力を駆使すれば意外とスムーズに読めちゃいます。

団扇屋の主人(といっても戦時中だから休業中)の、日々のできごとや感じたことが詳細に綴られてるんだ。
これが面白い。

戦争のことって、歴史の教科書で習った程度しか知らなかったんだ。
『日本は負けた』とか『原爆が落ちた』とか『たくさんの人が亡くなった』とか、そういう情報は知ってる。
でも当時の人々がどんな生活をしていたのかって詳しく知らない。

この本を読むと、それがわかるから面白い。
東京下町に住む庶民が戦争中にどんな生活をしてどんなことを思っていたのか、手にとるように想像できる。

娘が結婚したり、闇でイイモノを手に入れたり、団扇を作れないから運送業を始めたり。
町会長に嫌味を言われたり、こっそりすき焼きしたり、お風呂に入るのにも苦労したり、、、、。

たしかに、毎日空襲警報が鳴ったりしておそろしい時代だったと思うし、この一家だって警報の度に怖い思いをしてる。
でも、そういうことばっかりじゃないんだよね。
人々は、日によってはトイレの汲み取りがしてもらえないことに心を悩ませたりもしてるんだ。
当然といえば当然なんだけど、意外だった。

それからやっぱり皇室に対しての敬意はすごくって、日記の中でも特別丁寧な言葉で表されてる。
そういう時代だったんだなぁって、改めて思ったよ。

『戦争の記録』といっても決して重々しい感じではないし、『物語』として楽しめる内容。
大きな事件も起こるけど、何よりも日常の描写がすごいって思ったよ。

日記と聞くと躊躇しちゃうかもしれないけど、ぜんぜん単調じゃなくて毎日何かが起こってる。
小さいことも含めてね。
かと言って”出来事の羅列”だけじゃない。

後半(敗戦後)は、日本語のローマ字化計画たるものが持ち上がるの。
主人公(日本語大好き)は、この計画に猛反対。中止させようと戦うんだ。
その合間には、いかにも父親らしいことで悩んだりもするんだけど。

この本は、オススメですよ〜。

ちなみに、この小説のタイトルである「東京セブンローズ」は
下巻も半ばになってようやく意味がわかります。

2002/01/01 Tue | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 井上ひさし

オルファクトグラム

オルファクトグラム
井上 夢人

おすすめ平均
暖かく、優しく、ちょっと寂しい「匂い」

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結婚した姉の家に遊びに行って事件に巻き込まれた主人公、
気がついたら入院してた。
そして、退院した主人公の鼻に異変が!

この主人公、ものすご〜く鼻がよくなっちゃうんだ。
”犬”並み、もしくはそれ以上らしい。
ニオイの感じ方も、人とは違ってしまうの。
目で見るようにニオイがわかるんだ。

最初はとまどっていた主人公だけど、”ニオイ”というものに興味を持ち出したの。
その結果、ますます嗅覚も鍛えられてその実力を発揮する。
できあがった料理のニオイだけを頼りに材料を全部あてたり、調味料の量や火の入れ具合までわかっちゃったりね。

で、これを利用して事件の犯人を追うことを思いつくの。
親友が”シュウタンボウ”というものを発明(?)してくれて、それを使って犯人の行動を分析して追っていくんだ。
ここで立ち止まったとか、誰かと会った、とかね。

・・・何か、こう書くと大して面白くなさそうだな。
あーん、とっても面白いのにー。
久しぶりに、『読むスピードよりも先の展開が気になる方が勝って読みながらウズウズする感覚』を味わったもん。

後半はハラハラしながら読めるし、最後は感動もあり。
うん。おもしろかった!

とはいっても手放しでサイコーというわけではないんだ。
ひとつ、事件の特徴で気になることがあったんだけど、そのことについてはほとんど触れずに終わっちゃったの。
読み終わってしばらくしてから「ん?あれは何だったの?」って思った。
その1点だけ残念だったけど、トータルではかなりの高得点。
オススメよ。

2002/01/01 Tue | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 井上夢人

月の裏側

月の裏側
恩田 陸

おすすめ平均
「個性」と「マジョリティ」
ひたひたと恐い。。
これは怖かった…
怖いのがお好き・・・ですか?
とにかく怖い!読み終わっても怖い!

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久しぶりの恩田陸。
これは、ひたひたと怖いストーリー。

水に囲まれた街で起こった不思議な出来事。
盗まれた人々。
戻ってきた人々。
気付いた人々。
彼は本物?彼女は本物?
自分は本当に自分?

・・・って感じの内容。

裏表紙に書いてあった文章を読む限りは期待してなかったんだ。
だって、「まさか宇宙人による誘拐か、新興宗教による洗脳か、それとも?」なんて書いてあるんだもん。

でも面白かった。最初は情景の描写が多いんだけど、ストーリーが展開するにつれて勢いづくという感じ。
出て来る人といい、話の展開の方向といい、こういうの好き。

恩田陸の表現の仕方って、難しくないんだけど新鮮な感じを受けるから好きなの。
例えば主人公が子供の頃のことを思い出している場面で、『雨の音が落下の音なのか着地の音なのかひどく気になったことがあって』って。
主人公はちょっと変わった感覚を持っているという設定だから子供の頃もそうだったんだなっていうのが伝わるんだけど、だからってこういう風に書けるのってこういうことが思いつくのって、何だかスゴーイって思っちゃった。

2002/01/01 Tue | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 恩田陸

三月は深き紅の淵を

三月は深き紅の淵を
恩田 陸

おすすめ平均
未完成の地図
一夜の楽しみ
なんともいえない魅力
そして何度も読み返すのだ
不思議に満ちている

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「三月は深き紅の淵を」という本があって。
それは一般には発売されていない本で、誰が書いたかすらも謎。
持っている人は、1人に一晩だけ貸すことが許されているの。
ほんとに一晩だけ。例え読み終わらなくても。
それ故にこの本をきちんと読んだ人はほとんどいなくて、内容に関してもいろんな議論を呼んでいる。
マニアもいて、要約が出回っていたりもするらしい。
この本は四部作で、それぞれに謎があるという設定。


そして実際の「三月は深き紅の淵を」(恩田陸のね)も、四部作仕立てになっていて、それぞれが違うお話のようでいて、繋がっているようでもあって。

何というか、不思議な気持ちになった。
けしてハラハラしたりドキドキしたりする内容ではないんだけど、淡々と面白いというか、いつまででも読んでいたい感じ。
読み返してみたい気持ちにもなる。
「面白い」本というより「好きな」本と言った方がいいかも。

2002/01/01 Tue | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 恩田陸

球形の季節

球形の季節
恩田 陸

おすすめ平均
懐かしい匂いのする物語
登場人物が読ませます
恩田さんの恐怖+α
恐怖+α
眠る町の記憶

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今まで読んだ恩田陸の本はけっこう気に入ったのが多かったんだけど、これはイマイチだったかな。

町に流れる奇妙な噂や、噂どおりに起こる事件とその真相、
高校生の主人公「みのり」の戸惑いや迷い、親や友達との関係。

『新鋭の学園モダンホラー』と本の裏には書いてあったから位置付けはホラーなんだと思うけど、ホラーというには怖くなかったな。
青春の切なさ?とかそんな感じが強いかも。どうでしょ?

2001/01/01 Mon | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 恩田陸