すごく好きだなぁと思いながら最後まで読みました。
主な登場人物は、80分しか記憶を維持できない博士とその家でお世話をする家政婦、家政婦の子「ルート」。
会話のやり取りの中で数字や数式のことがあちこちに書いてありますが、小説として難しいとか数式が理解できないということはありません。
最初の方で「博士」と「私」に「友愛数」という共通点が発見された時、すでにこの小説に対して好感を抱いていました。
一見意味のない数字の一致、これに感動を覚えたりするところが私のツボにハマってしまったみたい。
例えば私の誕生日は12月31日なのですが、時計を見て12:31だったり前を走っている車のナンバーが1231だったりすると何となく嬉しいのです。
そういう感覚を共有したような気持ちになりました。
数式の気持ちよさや美しさ、なぜか読んでいるうちに涙が出そうな感動を覚えていました。
登場人物の言動や気持ちの移り変わりじゃない部分でこんな気持ちになるなんて、自分でも何だか不思議な感じでした。
数式を美しいと思う感覚や、博士の数字に対する愛情に共感を覚えたのかも。
「素数」の話が出て来た時、『もしかして私の誕生日「1231」と彼の誕生日「1211」は両方とも素数かも?』と思いついてウキウキしてしまいました。
最後に検証したら当たっていたのですっかり嬉しくなりました。
やっぱり運命なのね〜♪とか思ったり(笑)。
でも、公式に当てはまるからと言って逆は真じゃないのよね。
そう思ってよく考えたら、1211は7で割り切れた・・・。
わーん偽素数だったよー。
そういうところも面白かったりするのだけど。
かつて文章題とか因数分解が大好きで、気持ちいい答えが出た時は晴れ渡るようなクリアな快感があったなぁというのを思い出しました。
中学数学までの記憶しかないけど、やっぱり数字って素敵だなあと思いました。
もちろん数字がらみの話だけではなく、80分ごとに1975年の記憶にリセットされてしまう博士と親交を深めていく様子も読んでいて温かい気持ちになりました。
読後の余韻もいい感じで、かなり好きな方に入る作品だと思います。
因みに彼は、「家政婦」と読んだ瞬間に「市原悦子」を想像して読み進めてしまったそう。
途中で案外若いらしいということが判明して、イメージのやり直しだったと言ってました。
私はその話を彼から聞いていたからそういうことはなかったのだけど、そうじゃなかったらやっぱり「家政婦」=「市原悦子」かなー(笑)