感想文

本とか映画とかゲームとか。ネタバレはしないようにしています。

夜のピクニック

夜のピクニック (新潮文庫)

恩田 陸
新潮社
文庫

ひとことで言えば『青春小説』ってやつなんだと思う。裏表紙にもそう書いてあるし。
青春物ってあまり好んでは読まないのだけど、これはすごく面白かった。すごく好き。本屋大賞受賞作っていうのも納得したよ。

舞台は、「歩行祭」という高校の伝統行事。
80キロを歩き通すのが目標で、朝の8時から翌朝の8時まで、休憩や仮眠は挟むもののほぼ歩きっぱなし。
このイベントが進んでいく中で、いろいろなエピソードが絡んでくる。時間的には24時間の話なのだけれど、かなり濃いのだ。

話が進むにつれどんどん引き込まれていくし、続きも気になって、途中からはページを早く進めたくて仕方なくなっていたほど。
誰かから逃げているわけでも、冒険しているわけでもないんだけどね。新鮮な感覚だった。恋愛恋愛してないのもいい。

読み終えた後もけっこう余韻に浸ってしまったよ。いつかまた読み返したくなると思う。
あと、戸田忍くんが断然好みだ。

2007/11/13 Tue | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 恩田陸

トリツカレ男

トリツカレ男

いしい しんじ
新潮社
文庫

ジュゼッペは、通称「トリツカレ男」。次々といろいろなものにとりつかれては、周りが見えなくなるほどに夢中になってしまう。そんなトリツカレ男がもっとも深くとりつかれたのは…。

文字が大きめで行間も広め。語るような文体。童話のような物語でした。

1章を読み終えた段階では、『特にオチはなくて雰囲気を楽しむお話なのかな』という印象だった。でも間違いだった。何とも先の気になるストーリー展開。過去にとりつかれていたことがきちんと財産になっているところに気持ち良さを感じつつ、一気に読み終えました。

途中で切ない場面がありながらもちゃんと素敵に終わっていて、読後はあったかーい気持ちに。もう一度、今度はゆっくり読み返したいなと思わせられる作品でした。

2007/05/25 Fri | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > いしいしんじ

ドミノ

ドミノ

恩田 陸
角川書店
単行本

恩田陸さん、こういうのも書くんですね〜という嬉しい驚き。

主な登場人物だけで27人と1匹。
それぞれの事情を抱えつつ、彼らが東京駅やその周辺でてんてこまいしているのです。

まったく関係ない他人である登場人物たちにちょっとずつ因果関係がついてくるのも面白いのだけれど、とにかく先が気になってページをめくる手が止まらない。
みんな必死なんだけど、何だかコミカルで愛嬌があるのよね。

どんどん読んだのですぐに読み終わってしまった。
それぞれの今後をもっと読みたいなあという気持ち。
こういう小説が久しぶりだったっていうのもあると思うけど、『本って楽しいなあ』という気持ちにどっぷり浸ってしまいました。
読後感も悪くなかったしね。

登場人物が多いし場面の転換も頻繁だから、少しずつこま切れで読むのには向かないかも。
一気に読む方が絶対楽しめると思います。

あとは、ちょっぴりだけ作者視点の部分が出てくるのが意外で『へー』と思ったのと、ダリオに驚いた。

2006/07/20 Thu | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 恩田陸

邪魔

邪魔〈上〉
4062739674奥田 英朗

おすすめ平均
stars一級のクライムノベル
stars説得力がある日常との連続性
stars平凡な毎日が瓦解していく恐怖。
stars「最悪」を読む前に読むべし
stars人物のディテールに舌をまく楽しさ

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「空中ブランコ」と同じ作者なんだけど、その印象を引きずったまま読み始めたので、あまりの毛色の違いにビックリ。

上・下巻ある長編。
平凡な主婦「恭子」や警部補の「九野」、悪いことを覚えはじめた「裕輔」、そしてその周辺の人々のことが描かれています。
平凡だった人生が、ちょっとしたキッカケで心惑わされたり、犯罪を犯してしまったり。
追い詰められる恐怖や、何とも言えないやりきれなさ。

一貫して、人間の心の暗い面や、どうにもならないことへの焦りやいらだち、もがきが描かれています。
とにかくみんな必死なの。
息苦しいような気持ちで読み進めていたのだけど、続きがすごく気になるので手は止まらない。
そして最後は『こう来たか〜』とため息。
でも救いのない終わり方ではないし、読後感はそう悪くない。

コミカルさはまったくなくて、最初に読んだのが「空中ブランコ」だった私にとってはホント意外でした。
こうなると、俄然、他の作品も気になってきちゃうよ〜。

邪魔〈下〉
邪魔〈下〉

2005/06/29 Wed | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 奥田英朗

空中ブランコ

空中ブランコ
4163228705奥田 英朗

おすすめ平均
starsキャラクターの際立ち具合
starsストレス社会のヒーロー
stars今後の活躍に期待!!
starsおもしろすぎて考えさせられる作品
starsはやいところ三作目を!

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先に読んだ彼が「これは面白いよ!」と言っていたので、かなり期待しながら読み始めました。
で、本当に面白かった!!

5つの短い作品が入っていて、連作集といった感じ。
一風変わった精神科医、伊良部が毎回登場します。
この伊良部先生が可愛いんだわー。
丸々太った体に子供のような無邪気さ、大胆不敵な行動。
それが訪れる患者の警戒心を奪い、癒しを生む。
あれよあれよと伊良部ペースに巻き込まれている内に、症状解決の糸口が見えてきちゃったりするのです。

伊良部のそれは本能なのか、確信犯なのか?
どっちにしても、魅力ある先生なのには変わりない。
好きだなあ。

割と軽いテンポで進んでいくし、読みやすいですよー。
でも考えさせられるところもあったり。
伊坂幸太郎の「チルドレン」と同じニオイをちょっと感じました。

コッコちゃん情報によると、この作品は「イン・ザ・プール」の続編のようなので、こちらも早く手に入れたいな。
でもその前に、本棚でスタンバイしてる「邪魔」を読もうっと。

2005/06/08 Wed | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 奥田英朗

メドゥサ、鏡をごらん

メドゥサ、鏡をごらん
井上 夢人

おすすめ平均
難しいところを狙いすぎでは
コワかった・・・
オチはともかくとして・・・
恐さは得られなかった。
果てはどこ?

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作家である藤井陽造が、異様なやり方で絶命。
理由はまったく不明。
しかし、残されたノートから、最後の原稿があるかもしれないとわかる。
婚約者である藤井の娘に協力を頼まれ、主人公がその原稿を求めて行動するところから話がスタートします。

これ、すごく面白かったよー。
原稿を探す過程も面白いのだけど、次々に妙なことが起こるから読んでてドキドキしちゃった。
そして後半、『あれっ!?あれあれ?』と思うシーンが。
瞬間、主人公と同じ気分になった。
これってきっと筆者の思うツボな反応なんだろうなぁ。
昔に読んだ折原一の本を思い出したよ。こういう操られ方って好きだわ。

そして、岡嶋二人の時からそうだったけど、この人の作品って引き込まれ度がめちゃくちゃ高い。
案の定、今回も夢中で読んじゃいました。
本当はもっとイロイロ書きたいんだけど、方向性だけでネタバレしちゃいそうなのでこの辺で。

2005/03/30 Wed | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 井上夢人

純愛カウンセリング

純愛カウンセリング

岡村 靖幸
ぴあ
単行本

まさか岡村ちゃんが本を出すとは・・・。
今年は、今までの沈黙が嘘だったみたいにイロイロで嬉しい限りです。

この本は、『純愛とは何か?』をテーマに、岡村ちゃんが対談の旅をしていくという内容。
「ときメモ」のプロデューサーやゲイバーのママ、スワッピング嗜好を持つ夫婦や精神科医、さまざまな職業の人々と対談を繰り返していきます。

岡村ちゃんが話している(文字だけど・・・)様子が新鮮なのはもちろんですが、内容もまた新鮮で面白かった。
普段接点のない人たちばかりだから、『こんな風に考えてるんだ〜』とか思いながら読んでました。
そして、対談相手がみんな素敵な人に思えたなぁ。
例えば田原総一郎に対して、食わず嫌いというと変だけど、あまり知らないのにちょっと嫌悪感があったんです。
でもこれを読んだら好感が。
よく知りもしないで嫌ったらダメですね。

それから、対談の中で、いろいろな本からの抜粋が岡村ちゃんの口から飛び出してました。
それは対談相手が書いた本に限らずで、随分本を読んでるんだなあって思いました。

読み終わって、私の中で岡村ちゃんの魅力が更に増しました。
帯に「愛とエロスとFUNKの貴公子、純愛を語る」と書いてあったけど、まさに(笑)。
あ〜ん、ますます好きになっちゃったよーっ。

「岡村靖幸」を知らない人でも興味深く読める内容だと思いますので、是非!

2004/12/13 Mon | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 岡村靖幸

霧の橋

霧の橋
乙川 優三郎

おすすめ平均
いつの世も変わらぬもの
藤沢周平が好きならOK
静かな感動が広がります
どこかの書評に「蘇った武士の意地」といったものがありましたが、違いますね。

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時代小説はほとんど読んだことがないのですが、とても面白かったです。

本の裏の説明には、『武士を捨てた「惣兵衛」にやがて武士魂が甦り、妻は夫が武士に戻るのではと不安を感じ、心のすれ違いに思い悩む』といったことが書いてあります。
そこを事前に読んでいたので、宗兵衛はてっきり武士に戻りたくなって刀を持ってうろついたりするのかと思ってたんです(笑)。
でもどちらかというと、メインは武士魂ではなく商人魂という感じでした。
一歩一歩「商人」の道を進んでいたものの、武士の魂が残っていたことに気付く事件が・・・というのはあったのですが。

大店の陰謀に(もちろん刀はなしで)立ち向かっていく様子は、面白いしドキドキもしました。
たしかに時代小説なのだけれど、読みやすいし、ストーリーも夢中になれる展開を見せてくれます。

後半の、宗兵衛の心の動きや妻とのやり取りにも引き込まれました。
ラストはちょっとアッサリ感があったけれど、その後の会話を想像させるという意味では素敵な終わり方なのかも。

2004/11/25 Thu | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 乙川優三郎

陽気なギャングが地球を回す

陽気なギャングが地球を回す
伊坂 幸太郎

おすすめ平均
エンターテイメント!
単純におもしろいよー
面白かった!!
いい感じの90分映画
ツボでした

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私にとっては、2冊目の伊坂さん作品。

主人公は、銀行強盗4人組。
緻密な作戦を練り、何度目かの銀行強盗を決行するところから話は始まります。

・・・とは言っても、悪〜い感じはまったくしないの。
重苦しい雰囲気や切羽詰まったムードだって、ほとんど感じない。

強盗が成功するということに全員が絶対の自信を持っているからというのもあるけれど、会話が軽いというのもその原因かも。
とにかくテンポが良いんです。
内容も面白いし、掛け合いもキモチイイ。

そんな風だから軽い気分で読めるのだけど、遊び心がたっぷりで飽きさせない。
それに、主人公たちそれぞれに魅力があって、ついつい応援したくなっちゃうのよね。

彼らには特技(?)や主張が各々あるのだけど、それが会話の内容やストーリー展開に更なる面白さを与えてるんだろなって思いました。

いや〜、これも面白かった!
伊坂作品、どんどん読みたいです。

2004/11/19 Fri | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 伊坂幸太郎

毒(ポイズン)
赤川 次郎

おすすめ平均
自分だったら・・・。

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中学生の頃に読んだ本。2年くらい前に再読しました。

ほんの数滴で致死量に至って、効き目が出るのは使用後24時間たってからで、しかもカラダからは絶対に検出されないっていう毒薬が手に入ったら、あなたは誰かを殺しますか??

この本では、そういう毒薬が実際に存在するんです。
連作形式になっていて、この毒薬が次から次へといろいろな人の手に渡っていきます。

いろんな人のいろんな殺意。
でも共通しているのは、罪悪感の薄さ。
絶対にバレないってこと、飲ませてもすぐに苦しむわけじゃないことが「自分が殺した」って気持ちを忘れさせるのかな?
でも邪魔者を消したからといって必ずしもシアワセになれるとは限らないんだよね。

いま読んでもけっこう楽しめるかな?と思える1冊。
「じっくり読む」という感じでもないけど、毒の行方が気になってダーっと読めちゃうよ。
赤川次郎らしい読みやすさも手伝ってくれるしね。

2004/11/09 Tue | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 赤川次郎