感想文

本とか映画とかゲームとか。ネタバレはしないようにしています。

コンセント

コンセント
田口 ランディ

おすすめ平均
官能は感応
話題になっただけあって
喪失と共感、生と性…ランディさんの原点?
高熱を出したあとのよう。
コンセントとプラグが生み出すもの

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友達に「田口ランディいいよー。アンテナが超オススメ。他はまあ普通だけど」と言われたのが購入のきっかけ。
「アンテナ」は先に彼に読ませてあげてしまったので、私は「コンセント」から入りました。

友達によれば「普通」とのことでしたが、私にはとても面白い作品でした。
大学で心理のコースを取っていたし、夢に興味があるので内容に心惹かれたというのが大きいかも。
兄の突然の死がきっかけとなって、主人公の考えや行動、周りとの関係が動いていきます。

後半、精神病に関する話が出てきますが、こういうこともあり得るんだろうなあと思わせられるような展開でした。
どこからが精神病なのかという判断。
『難しいんだろうなぁ』と素人考えでも思いますが、本人の中で起こっていることはやっぱり本人にしかわからないのでしょう。
と言うより、本人にもわからないから他人が判断するのには間違いも起こるのだということ。
境界の曖昧さを疑似体験したような気分になりました。

『コンセント』の意味も、今まで考えてもみなかったけどあり得そう!という新鮮な思いで読みました。
かなり好きな方に入る作品です。
アンテナも早く読みたいな。

ところで、田口ランディって女の方だったんですねっ?
どのくらい作品があるんだろうと思ってオフィシャルウェブを訪ねた際に、初めて写真で知りました。
性的描写が多かったからなのか、近所に「田口」という男の子が住んでいたからなのか、勝手に男性を想像していました。。。(笑)

2004/06/18 Fri | 本 > 日本の小説・エッセイ > た行 > 田口ランディ

博士の愛した数式

博士の愛した数式
小川 洋子

おすすめ平均
心があらわれます。
博士の魔法
数字に対する見方がかわる本です
久しぶりにあたたかい風を感じた。
涙が止まらない〜!

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すごく好きだなぁと思いながら最後まで読みました。
主な登場人物は、80分しか記憶を維持できない博士とその家でお世話をする家政婦、家政婦の子「ルート」。
会話のやり取りの中で数字や数式のことがあちこちに書いてありますが、小説として難しいとか数式が理解できないということはありません。

最初の方で「博士」と「私」に「友愛数」という共通点が発見された時、すでにこの小説に対して好感を抱いていました。
一見意味のない数字の一致、これに感動を覚えたりするところが私のツボにハマってしまったみたい。
例えば私の誕生日は12月31日なのですが、時計を見て12:31だったり前を走っている車のナンバーが1231だったりすると何となく嬉しいのです。
そういう感覚を共有したような気持ちになりました。

数式の気持ちよさや美しさ、なぜか読んでいるうちに涙が出そうな感動を覚えていました。
登場人物の言動や気持ちの移り変わりじゃない部分でこんな気持ちになるなんて、自分でも何だか不思議な感じでした。
数式を美しいと思う感覚や、博士の数字に対する愛情に共感を覚えたのかも。

「素数」の話が出て来た時、『もしかして私の誕生日「1231」と彼の誕生日「1211」は両方とも素数かも?』と思いついてウキウキしてしまいました。
最後に検証したら当たっていたのですっかり嬉しくなりました。
やっぱり運命なのね〜♪とか思ったり(笑)。
でも、公式に当てはまるからと言って逆は真じゃないのよね。
そう思ってよく考えたら、1211は7で割り切れた・・・。
わーん偽素数だったよー。
そういうところも面白かったりするのだけど。

かつて文章題とか因数分解が大好きで、気持ちいい答えが出た時は晴れ渡るようなクリアな快感があったなぁというのを思い出しました。
中学数学までの記憶しかないけど、やっぱり数字って素敵だなあと思いました。

もちろん数字がらみの話だけではなく、80分ごとに1975年の記憶にリセットされてしまう博士と親交を深めていく様子も読んでいて温かい気持ちになりました。
読後の余韻もいい感じで、かなり好きな方に入る作品だと思います。

因みに彼は、「家政婦」と読んだ瞬間に「市原悦子」を想像して読み進めてしまったそう。
途中で案外若いらしいということが判明して、イメージのやり直しだったと言ってました。
私はその話を彼から聞いていたからそういうことはなかったのだけど、そうじゃなかったらやっぱり「家政婦」=「市原悦子」かなー(笑)

2004/06/17 Thu | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 小川洋子

くじらの降る森

くじらの降る森
薄井 ゆうじ

おすすめ平均
やはり・・・

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最初の感じでホンワカなお話かと思っていたのですが、後半の展開ではちょっと重さを感じるストーリーでした。
何て言えばいいのか、感想を書くのが難しいな。
今までに読んだことのないタイプかも。

ここに出てくる人たちは皆、「常識人」と呼ばれるようなタイプからはどこか外れている部分があります。
誰にでもそういう所はあると思うけれど、その外れている部分が際立って描かれている感じ。
登場人物たちは、それぞれその部分を大切に生きているんだなと思いました。

裏表紙には「心を癒してくれる現代の神話」と書いてあります。
たしかに神話っぽいイメージがあるかも。
でも、ただ単に癒されるという内容ではありませんでした。

キディランドに置いてある「くじら」の商品の記述や、シンタロウがマサルを見つけられずに戻ってきた時の「くじら」のありかの表現は、実験的だなあとは思ったけれど私はあまり好きではないかもしれない。
表現の方法ばかりに気を取られて、読み飛ばしたような状態になっていた気がします。

この作品は2作目(1991年単行本化)だそうなので、他の物(特に最近の)も読んでみたいなあと思いました。

2004/06/15 Tue | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 薄井ゆうじ

嘘をもうひとつだけ

嘘をもうひとつだけ
東野 圭吾

おすすめ平均
犯人だけを責められない。
切なくなる短編集
トータルコンセプトとしての完成度が高い作品
嘘はつけないものですね。
悲しい4つの事件+1

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5つのお話が収録されています。
「連作」といった感じで、ある1人の刑事がどの作品にも登場してきます。
ただ、視点はその刑事からのものではなく、事件に関わっている人の行動や感じ方で書かれています。
読んでいるうちに『こういうパターンか〜』とわかるのですが、それでも楽しく読めました。
ひとつひとつが短めだし(50〜60ページくらい)、それぞれ独立した事件なので空いた時間に少しずつ読むのもいいかなと思います。

謎解き自体は特別アッと驚くような物ではありませんでしたが、それよりも、犯人や周りの人の心理が読んだあと心に残りました。

2004/05/29 Sat | 本 > 日本の小説・エッセイ > は行 > 東野圭吾

きんぎょの夢

きんぎょの夢
向田 邦子

おすすめ平均
日常生活のドラマ模様

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短編が3つ入っているのですが、表題作の「きんぎょの夢」は何となーく「阿修羅のごとく」に似た雰囲気を感じました。
もちろん細かい設定は違っているのであくまで何となくなんですが。
四姉妹ではなく三姉妹だという点と、姉妹全員ではなく1人にスポットが当てられているというのが大きく違うところかな?

1ヶ所、とても似たエピソードがあったので、これを書いてから「阿修羅のごとく」へと広がっていったのかなという気がしました。

2冊読んでみて思ったのは、向田邦子という人は普通の人の普通の日常を書くんだなあということ。
その中でのちょっと非日常。
だからついつい夢中で読んでしまうのだけど、ここに収録されているお話はどれも読後に何となくモヤモヤが残りました。

そうやってイロイロ考えさせられるということは良い作品なんだろうなあと思うし、ある意味「余韻たっぷり」なのだけれども・・・。
あんまり私が好きなモヤモヤ感ではないかも。
それでも、他のも読んでみたいなとは思っています。

2004/05/26 Wed | 本 > 日本の小説・エッセイ > ま行 > 向田邦子

阿修羅のごとく

阿修羅のごとく
向田 邦子

おすすめ平均
女に生まれて良かったと思いました。
物語の全貌がわかりました
向田邦子“原作”ってとこが注意ですね
阿修羅のごとく

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向田邦子の作品を読んでみようと思い立ち、映画化されているということでこれを選びました。
でも、元々は放送台本として書かれたもので、小説化したのは別の方のようです。

四姉妹の父に「面倒みてる人」がいることが判明し、4人が両親には内緒であれこれ相談するところから話は動いていきます。
でも、話が進むうちに四姉妹にもそれぞれあまり言えないような事情があることがわかってくる。

それが何ともリアルに描かれていて、ついつい夢中で読み進めてしまいました。
リアルであるが故に、登場人物のセリフにやきもきしたりすることもしばしば。
でも何だか魅力的なんだなぁ。
本当に身近にいそうな感じがするからか、感情移入しやすかったです。
姉妹間のケンカも興味深かった。
きょうだいのケンカって遠慮がないですよね。
でも、私が妹とケンカしたらここまで言うかなぁ?と思うようなセリフまで飛び出してました。

言葉遣いは今の同じ年齢の人とはやっぱり少し違う部分もあると思うけれど、内容に関しては20年以上前に書かれたという古さは感じませんでした。

映画では、大竹しのぶ、黒木瞳、深津絵里、深田恭子が演じているそうです。
読みながら『誰が出てるんだっけ?』と考えたのですが、大竹しのぶと黒木瞳が思い出せずに鈴木京香と小林聡美でイメージしてました。
考えてみれば、長女は45歳という設定だから鈴木京香じゃ若すぎるかぁ。
観てみたくなりました。

それから、新潮文庫の方はシナリオ版らしいので読み比べもしてみたいな。

2004/05/20 Thu | 本 > 日本の小説・エッセイ > ま行 > 向田邦子

二重螺旋の悪魔(上・下)

二重螺旋の悪魔〈上〉
梅原 克文

おすすめ平均
圧倒的スケールを感じられます
文句なし
実写で見たい。。。


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二重螺旋の悪魔〈下〉
梅原 克文



主人公は一人の男性。
人間のDNAに隠されているある情報を呼び出してしまったがために、未知の化け物と闘うことになってしまいます。

この作品は三部構成になっていて、上巻では第一部と第二部、下巻では第三部が収録されています。
第一部では未知の化け物「C」(後に「GOO」)との出会いや闘い、第二部では「C」の中でも特に手強い「ダゴン102」を倒すため主人公が「UB」という半不死身状態になって闘っていく姿が描かれています。
そして第三部では何年か後という設定。GOOとの全面戦争、更には神との関係まで明らかになってきます。

近未来のような雰囲気の中でハラハラした展開が続くので、飽きずに読めました。
恋愛感情もところどころに入ってくるのでそちらの方も気にしながら読んでいたかも。
主人公以外の登場人物も、それぞれにお茶目な部分があったりして魅力的でした。

ちょっと気になったのは、前半の地の文に「!」がよく出てきたこと。
見慣れないので何だか不思議な感覚でした。

あとは2ヶ所ばかり展開が読めてしまったのが残念だったかな。
『絶対こうなんだよ』と思っていたところがそのままそうだったので少し物足りない気持ちでした。

でも全体としては想像を超えたストーリーで面白かったです。
長編だから読み応えもあったし。
これでもかというくらい次々に事件が起こるのでドキドキが途切れません。
ホラー物は久しぶりに読んだということもあって新鮮でした。

2004/05/11 Tue | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 梅原克文

解夏

解夏
さだ まさし

おすすめ平均
よかったです
私たちも。。
映画から観たのですが
私の解夏
素晴らしい作品群

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映画化で話題になっていたのと、彼が「さだまさし好き」なので気になって読んでみました。
そもそもはミュージシャンなのだからとそんなに気負わずに読み始めたのだけれど、思いのほか素敵な作品でした。

「解夏」は失明する病気にかかってしまった青年のお話です。
まわりの人々はみんな優しく、主人公も一生懸命。
何だか切ないような気持ちで一気に読みました。
さだまさしがあんなに温かい文章を書くなんて。
たしかに歌詞はストーリー仕立てになっている印象だけど、グイグイ引き込ませるように書ける人なんだなあと少し驚きました。

風景の描写も多いのですが、イメージ下手な私にしては珍しく周りの情景が目に見えるようでした。
そういった風景も含めて、いつまでも心に残っていきそうな作品だと思います。

実はこの本は短編集という感じで、4作品が収められています。
長編だと思っていたので『あれっ?』と思いましたが、残りの3つも素敵なお話ばかりなんです。
胸をいっぱいにしながら夢中で読み、読後感良くいつまでもあれこれ考えて1日過ごしていました。
長編で没頭した時間が長い作品だけが余韻を残すわけでは決してないということを改めて思い知らされました。

中古じゃなく本を買ったのはすごく久しぶりなんですが大満足です。
さだまさし、おそるべし!

2004/01/14 Wed | 本 > 日本の小説・エッセイ > さ行 > さだまさし

やんごとなき姫君たちのトイレ

やんごとなき姫君たちのトイレ
桐生 操

おすすめ平均
教養の安売り行為
本当に面白いです(>_<)
お姫様だってトイレに行く

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中世のヨーロッパや江戸時代のトイレ事情がいろいろ紹介されてます。
殿様や姫君、王様や貴族、それに庶民。
どんなトイレがどのように使われていたかなんて、すごく興味ある!
まったく知らないし、楽しんで読んだよー。
ピロートークで彼に語り聞かせたりしてました(笑)。

トイレだけで1冊完成してるわけじゃなくって、そこから派生してお風呂や香水なんかのことも書いてあるよ。

トイレの重要度が高い私としては、『今はトイレがたくさんあるし恵まれてるのね〜』と思わずにはいられなかったです。

シリーズで”寝室”と”秘め事”ってのも出てるらしいのでそれも気になる。

ただねー、けっこう文が読みにくいんだよね。
事実を並べてる本だから仕方ないのかもしれないけど、スムーズに読めないっていうか。
うーん、うまく言えないんだけど。

2003/05/02 Fri | 本 > 日本の小説・エッセイ > か行 > 桐生操

東京ホリデイ-散歩で見つけたお気に入り-

東京ホリデイ―散歩で見つけたお気に入り
杉浦 さやか

おすすめ平均
癒し系東京
お散歩が楽しくなる♪
読んだら、行きたくなる場所

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本屋さんで見つけて即ゲット。可愛いんだもん。

東京のみどころをイラストつきで紹介してあります。
みどころとは言っても話題のビルとかそんなんじゃなくって、普通のガイドブックには載っていないような小さなお店や路地に目を向けてる。
プラプラ歩いてノンビリと過ごすのに最適って感じのセレクトなんだよねー。
目のつけどころが素敵な楽しみ方もイロイロ。
ところどころ小さく写真もついてるよ。

見てるだけでも十分楽しめるんだけど、手書きの地図もついてるから実際に行ってみるのもよさそぅ。
この人の本を読むといつも”再発見!”って感じで嬉しくなります。
東京もいいもんだよね♪

2003/05/01 Thu | 本 > 日本の小説・エッセイ > さ行 > 杉浦さやか