感想文

本とか映画とかゲームとか。ネタバレはしないようにしています。

ポプラの秋

ポプラの秋
湯本 香樹実

おすすめ平均
ほのぼのとした作品
天国への手紙
優しい
著者の観察眼を堪能
稀にみる一等級の作品

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ポプラ荘に住んでいた頃の大家さんが亡くなった。
そんな知らせで物語は幕を開けます。

主人公の「千秋」は当時7歳。
父が亡くなったばかりで、母は傷心中。
幼いながらにあれこれ考え、体調を崩してしまう千秋。
その後、なりゆきから、大家のおばあさんの部屋に通うようになるのです。
成長した女性が過去を振り返る形で描かれています。
文体こそ大人のものだけれど、視線は子供そのもの。
感じたことや考えたこと、父への想いがまっすぐに伝わってくる気がしました。

亡き父に宛てて書いていた手紙が途中何回か挿入されるのですが、これが何と言うか、胸に沁みるんです。
父に思いを馳せ、死について考える。
感じたままを書いた手紙。
グッときたり涙が出たりというのとは少し違って、静かだけれど心に響くという感じでした。

おばあさんとのやり取りも良かったなぁ。
ぷぷっと笑っちゃう場面があったりして。

そして、お葬式のシーンや最後の展開も好きです。
あの時間は、ちゃんと今の千秋に影響を及ぼした。
母の想いも伝わった。
こういう雰囲気は、とても好み。
この人の作品は初めて読んだのだけど、けっこう好きかもしれないなー。
難しすぎる言葉は使わずに、ちゃんと情景を思い浮かばせてくれる。
他のも読んでみたいです。

2004/08/27 Fri | 本 > 日本の小説・エッセイ > や行〜その他 > 湯本香樹実

予知夢

予知夢
東野 圭吾

おすすめ平均
軽〜いタッチの短編集。寝る前に最適!
テレビドラマっぽい
オカルト満載
『探偵ガリレオ』と比較すると・・・
表紙に魅かれた。

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タイトルで既に心惹かれていました。
夢にはすごく興味があるし、夢にまつわる不思議な話とかも大好きなので。

この作品は5つの短編が入っている連作ミステリーです。
そのうち夢がかかわっているのは2つなんですが、どれも面白かったです。
章ごとのタイトルの付け方も、ちょっと変わってて好き。
殺人事件が起こるところまではそう珍しいストーリーではないのだけれど、不思議なことがからんでくるのです。
事件が起こる「前日」に事件を目撃していたと語る女の子や、ちょうど殺された頃の時間に別の部屋に現れていた被害者、住人亡き後ポルターガイストが起きる部屋などが登場。

どれも説明がつかないことだけに、刑事の「草薙」は戸惑いを感じます。
そこで相談をする相手として登場するのが、物理学者の「湯川」。
この作品では、刑事さんではなく物理学者が謎を解くのです。

湯川は話を聞いた時点である仮説を立て、後日それを実証してみせます。
それは、今までの捜査方針や状況が引っ繰り返ってしまうような内容。
読んでいる方としては、この展開がすごく面白かったです。

私は、霊感は多分ないんですが、予知夢(というか透視夢?)は見たことがあります。
だから不思議なことは現実に起こるんじゃないかと思っている方なんですが、湯川教授の説明は論理的でスッキリ説明してくれたから、何だか気持ちがよかったな。

ひとつひとつは短い時間で読めるし、通勤時間や待ち合わせの時なんかに読むのにオススメ。
今まで読んできた東野圭吾作品は長編が多かった私。
深みがあって好きだったんですが、短編は短編でまたいいなぁと思いました。

2004/08/25 Wed | 本 > 日本の小説・エッセイ > は行 > 東野圭吾

チルドレン

チルドレン
伊坂 幸太郎

おすすめ平均
読書でこんなに癒されるなんて・・・。
これまで感じたことが無い感動。
いつも思う
シリーズ化を望む!
読んで欲しい

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5つの短編からなる連作集です。
・・・が、筆者があとがきで「一つの長い物語として楽しんでいただければ」と書いているように、長編だよね?と思えるようなまとまりがありました。

一つ目の作品「バンク」だけ、いくつかの章(というか節?)に分かれています。
それぞれに小タイトルがついているんですが、その命名の仕方がツボでした。
こういう言葉遊びって大好き。

登場人物も魅力的。
目立っていたのは、盲目ながら的確な推理を見せる「永瀬」と、メチャクチャやっているようで奇跡を起こしてしまう「陣内」。
2人とも、セリフや行動に意外性がある。
でも無理がないんです。
永瀬の小気味好い推理は読みながら嬉しくなるし、陣内の言動も痛快。
何より素敵なのは、2人ともすごくあったかいの。

どの作品も最後にはピッタリと納まるので、『そういうことか〜』とスッキリ。
それでいて温かい気持ちにも浸れる素敵な作品でした。

余談ですが、私はどうも名前から人をイメージしてしまう癖があるみたい。
「伊坂幸太郎」さんも、もっとお年を召した方なのかと・・・。
お若い人だったんですねー。
2つしか違わないとは!意外でした。
でも、写真を見たら、作品から感じていた通りの優しそうな印象。
『やっぱりねー』と思っちゃいました。

2004/08/24 Tue | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 伊坂幸太郎

くらのかみ

くらのかみ
小野 不由美

おすすめ平均
ざしきわらしのいる夏休み
死人ゲーム(四人ゲーム)で座敷童子出現?!
学校図書館を思い出しました。
親子、孫まで読ませたい本
作者の意図を考えて読む本

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親の用事で親戚のお屋敷に集まった子どもたち。
蔵の中で「四人ゲーム」を試したら、終わった後に、子どもが一人増えていた!
・・・という、不思議な事件から始まる物語です。

座敷童子、古い井戸、底なし沼。
古くからあるお屋敷とその周辺には、様々な言い伝えが残っています。
そして、それを実証するかのような事件が次々と起こるのです。
霊の仕業とも人間の犯行とも思えるような数々の怪事件。
放っておけば命の危険だってあるのに、大人はまったく当てにならない。
子どもたちは自分たちの力で犯人を捜そうと考えます。


この作品は、講談社の「ミステリーランド」という企画で、第一回目配本として出版された作品です。
「かつて子どもだったあなたと少年少女のための-」という謳い文句通り、大人も子どもも楽しめる内容ではないかと思いました。

謎を解くのは子どもだけれど、少しずつながら確実に真相に近付いていく様子が気持ち良かったです。
最後は「そうだったのかー!」と思う展開もあり、楽しんで最後まで読めました。
小野不由美ってこういうのも書くんだねという新鮮さもあったなぁ。

あ、イラストは「コロボックル物語」の人でした。
何となく得した気分になったりして。

「ミステリーランド」は、各回3冊ずつ、3ヵ月ごとの配本です。
装丁もちょっとカッコイイ。
執筆陣がすごく豪華なの。他のも早く読みたーい!

2004/08/20 Fri | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 小野不由美

うつくしい子ども

うつくしい子ども
石田 衣良

おすすめ平均
どこか透明感のある文章
うつくしい本
飽きのこないダブルキャスト
innocent
殺人犯の家族の視点

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静かな街で、9歳の女の子が残忍なやり方で殺される事件が発生。
やがて犯人として「補導」されたのは、13歳の少年でした。
この事件は、毎日のようにニュースやワイドショーで取り上げられます。
少年法についての論議が巻き起こり、動機についての推測があちこちに書かれる。
全国の注目を集めるような大事件です。

さて、少年には、一つ年上の兄「ジャガ」がいます。
事件が起こった日から、ジャガの生活も一変してしまいました。
両親は離婚せざるを得なくなり、引越しも余儀なくされてしまう。
しばらくは、記者の取材やいたずら電話が絶えることはない・・・。

それでもジャガは、傷つきながらも負けませんでした。
弟の心の内を探ろうと、奔走し始めるのです。

物語は、兄である「ジャガ」と新聞記者「山崎」、2人の視点から描かれています。
しかし、ストーリーが進みドキドキする展開になるにつれ、「ジャガ」からの視点が増えてきました。
子ども目線だからなのか、ドキドキ感も倍増です。
そんな風だから、どんどん読み進めてしまいました。
とても面白い本だったけれど、難しいテーマが隠されているんだろうなとも思います。

まず、殺し方の残忍さと犯人の年齢の低さ。
数年前の事件を思い出させられました。
間違いなく筆者もあの事件を意識して書いているんだろうなと思います。

タイトルは「うつくしい子ども」ですが。
「うつくしい」って何だろうって思った。
顔だけ美しくたって、中身はそうじゃないこともある。
一見すべてが美しいように思えても、見えないところで歪んでいることもあるでしょう。
その歪んだ部分こそが本人にとっては「うつくしい」かもしれないし。
大人の価値観で「うつくしさ」を求めたら、個性を潰してしまうってこともあり得る。
かと言って「個性」=「犯罪」になっても困るしなぁ。

・・・といった感じで、しばらくグルグルと考えさせられる作品でした。

2004/08/19 Thu | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 石田衣良

花の下にて春死なむ

花の下にて春死なむ
北森 鴻

おすすめ平均
面白くて美味しい。
こんな店の常連になりたい
読んでて無性にビールが飲みたくなりました。
おふくろの味噌汁のようなミステリー
味のある連作短編集

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こういうタイプのお話は好き。
人も死ぬし謎も解くんだけど、あまり血生臭くないしドロドロもしていない。
最後には何となく切ない気持ちや温かい気持ちが残ります。
加納朋子と同じニオイを感じてちょっと嬉しくなりました。

6編の連作が収録されていますが、どの作品にも「香菜里屋」というお店が出てきます。
そこのマスターはとても優しくて丁寧な人で、そのうえ頭がすごくきれるんです。
カウンターの中でお客さんたちの話を聞いているだけなのに、頭の中では既に謎を解いてしまっていたり。
そういう設定も好みなんですが、出てくるお料理がまた美味しそうなのですよ。
マスターがその日に入った食材で一品作って出してくれる場面があって、それがいちいち美味しそうなの。
訳のわからない名前がついていたり知らないソース名だったりすれば想像力も大して働きませんが、ここに出てくるものは、わかりやすい説明で描かれているのですごくイメージが湧いちゃうんです。
あー食べたい(笑)。
頑張れば自分でも作れるかも?って思うようなのもあったので、いつかチャレンジしてみたいな。

度数の違うビールが4種類置いてあるというのも気になるんですよね。
このお店、実在してないのかな〜。絶対行きたい!

あ、そういえば、ところどころ少し読みにくい部分がありました。
セリフが続いて誰が言っているのかわかりにくかったり、表現がぴんと来なかったり。
最近あまり本を読んでなかったからかなー?

2004/08/02 Mon | 本 > 日本の小説・エッセイ > か行 > 北森鴻

妄想炸裂

妄想炸裂
三浦 しをん

おすすめ平均
祝「電車内で読んではいけない本」ペスト3入り
妄想はふくらむよ、どこまでも。世界の果てまで飛んでいけーっ(ぽよよーん)
本当に炸裂!

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本の裏に「爆笑エッセイ」と書いてあり、あちこちで聞くウワサでも相当に面白いと聞いていました。
Boiled Eggsで見初められてデビューしたとか、そんなような記事もダヴィンチで読んでいたので、かなり期待していたんですが・・・。

1ヶ所プッと吹き出しそうな箇所があったくらいで終わってしまいました。
爆笑はなかったなぁ。
妄想っぷりはたしかに炸裂なのだけど。。。
私が面白いと感じるツボとはちょっと違うのかもしれません。

4分の1ほど読んだ辺りでこれは私には合わないんだと気付き、途中からトイレでちまちまと読む本にしてしまいました。
ゴメンなさい*

2004/07/26 Mon | 本 > 日本の小説・エッセイ > ま行 > 三浦しをん

四日間の奇蹟

四日間の奇蹟
浅倉 卓弥

おすすめ平均
タイトルが間違ってない?
千織に惚れました
泣けなかったけど、いい話です。
泣きました;;;
ドキドキあっという間

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『このミステリーがすごい!』の第1回大賞金賞受賞作です。
”ある人気作家の作品(敢えて書きませんが)と設定が似ているけど良い”という前評判をあちこちで聞いていて、割と前から気になってました。

似た設定だということは気にせず読もうと思っていたのですが、読み始めてみるとやっぱり気になっちゃってました。
いつ出てくるのかというのが常に心にあるような感じで・・・。
真ん中辺りまでその設定が出て来なかったのでちょっと意外でした。

でも、面白かったです。
先に世に出ていた方の作品は、読後にかなり切ない余韻が残ったのですが、こちらは爽やかな感動を置いていってくれたという印象でした。
もちろん途中には、切ない要素も悲しい要素もツライ要素もあるんです。
それが、最後には素敵な状態で終わっている。
私は涙までは流れなかったんですが、読む人によっては泣けちゃうんじゃないかと思います。

確かに設定は似ていて、あの作品を読んだことのある人なら間違いなく連想してしまうだろうなあという感じは受けました。
あまり見かけない設定だから余計に。
でも、盗作だとかパクリだとかの悪印象はない。
それよりも、設定が同じでもまったく違う作品になるものなんだなあと逆に感心してしまいました。

2004/07/14 Wed | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 浅倉卓弥

世界の中心で、愛をさけぶ

世界の中心で、愛をさけぶ
片山 恭一

おすすめ平均
泣くためにある本ではなく、考えるためにある本
自己中心的でカン違いな恋を叫ぶ
驚愕の作品
つまんない
期待はずれ

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口調が不自然なのがどうも気になってしまいました。
最初に読んだ彼がそう言っていたから余計にかもしれないけれど。
特に女の子(アキ)の方。
いくら物語の時間設定が今より前(と言っても10年ちょっと)だからって、高校生の女の子が親しい人に「こういうの嫌だわ」とか「なぜかしら」とか「ええ」とかって話すかな?
学級委員をするくらいだから、『きちんとした子だよ』ってことなのでしょうか。
でも私だって学級委員やったことあるぞ。小学生の時だけど。

・・・とか文句を言いつつも、やっぱり泣きました。
(「秘密」ほどじゃないけど)
どうしても、大切な人がいなくなるという描写では『これが自分たちだったら』と当てはめて考えてしまうので。
今が一番シアワセだから失うのが怖いという気持ちもすごくわかるし。

後半のおじいちゃんの考え方が好き。
普段は「私よりも1日後で死んでね」と彼に言っているけれど、実際に私の方が先に死んでしまうとしたら、残った彼の気持ちを思うととても堪えられない。
いくら悲しくても、彼が悲しむくらいだったら自分が悲しい方がいいやって思う。
それが大切な人に対しての自然な気持ちなのかなーっと思いました。

この主人公だけじゃなく、みんな「世界の中心で」愛をさけんでるのだと思う。
他の人には興味のない死であっても、自分にはとても辛かったり悲しかったりする。
いつだって、自分にとっての世界の中心は大切な人と自分。
(”自己中心的”という悪い意味ではなく。)
世界の中心は自分の心の中にあるとも言えるし、自分がいるこの地が中心だとも言える。
勝手な解釈かもしれないけれど、読んでみてそんな風に感じました。

売れまくってるので気になって読んだわけなのですが、読みやすいから売れてるのかな?という印象を受けました。
大感動するほどではないというか。
朔太郎が大人になってからの描写が最後に少しあるんだけど、そこが妙にアッサリしてるように感じたなあ。あれだったらむしろなくて良かった場面だと思う。

余談ですが、中に「大木」という友人が出てきます。
私の知っている「大木」は「ビビる大木」しかいないので、どうもあの人をイメージしながら読んでしまいました(笑)。

それとこの本、「世界の中心で愛を叫んだけもの」という海外の小説にタイトルが酷似してるけど、何か影響を受けたのかな?

2004/06/30 Wed | 本 > 日本の小説・エッセイ > か行 > 片山恭一

白夜行

白夜行
東野 圭吾

おすすめ平均
著者の代表作のひとつと言える
白夜の人生と闇黒の道程
昨日読み終えて・・・
悪女になるなら月夜はおよしよ
初めて読んだ東野圭吾作品です

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文庫で厚さが約3cm、854ページとかなりボリュームがあります。
にもかかわらず、残り半分は我慢できずに一気に読んでしまいました。
明け方まで本を読んだのなんて本当に久しぶりです。
それくらい、面白かった。

発端はひとつの殺人事件。
とは言え、単にその事件の犯人を捜していくだけの推理小説ではありません。
展開も年月の経つスピードも速いし、最初の殺人以外の事件も次々に起こります。
面白いのは、章ごとに違った人物からの視点でエピソードが描かれていき、読んでいく内に関係が次々とつながっていくところ。
中でも、ある2人の人物をめぐるつながりが際立ってくる。
この、段々つながっていく感じ、連鎖していく感じが気持ち良いのです。

更に、犯人が誰だかまったくわからない状態ではなく、何となく『この人は関係あるに違いない』というのを匂わせながら話が進んでいく感じです。
それが一体どんな風に判明するのか、または判明しないで終わるのか・・・といったことが気になって気になって。
ページをめくる手が止まりませんでした。

そして、今までの東野圭吾の作品にはなかったような暗さ。
哀しいのです。
ただ、不思議なことに読後感は悪くありませんでした。
犯人の心に、確固たるものを感じていたからかも?

2004/06/26 Sat | 本 > 日本の小説・エッセイ > は行 > 東野圭吾