感想文

本とか映画とかゲームとか。ネタバレはしないようにしています。

カツラ美容室別室

カツラ美容室別室

山崎 ナオコーラ
河出書房新社
単行本

『人のセックスを笑うな』で話題になっていたので、こっちを読んでみたのだけど……面白くなかった。地の文ではちょっといいなあと思う表現がいくつかあったものの、会話の文は何だかぴんと来なくてずっと落ち着かないまま最後まで行ってしまった。

特別な事件が起こるわけでもないし、登場人物に感情移入もしなかったし、切なさもそれほどではなかったし、余韻もない。日常を描いた作品が嫌いなわけでも途中で飽きちゃったとかでもないんだけど、ただ読まされただけって感じしか残らなかったな。読みながら気になっていたちぐはぐ感も、ついに解消されないまま。

ストーリーが進んでも、登場人物の魅力や性格がいまいち伝わってこなかった。つながっていかないんだよね。一貫性がない感じで、一体どのような人なのかが理解できなかった。どの人も。

友情がテーマなのかなとは思うけど…うーんよくわからない作品。逆に他の作品を読んでみたくなったよ。

2008/01/18 Fri | 本 > 日本の小説・エッセイ > や行〜その他 > 山崎ナオコーラ

いつか、ふたりは二匹 (ミステリーランド)


主人公は、ネコの体に乗り移れる少年。
こんな設定からスタートしたものだから、最初から西澤保彦っぽさ全開だなあとか思ってちょっとニヤニヤした気分で読んでました。

この本は『かつて子どもだったあなたと少年少女のための―』が謳い文句の講談社「ミステリーランド」シリーズの1冊。
児童書っぽい装丁に、大きめの文字。さくさく読める。

ネコに乗り移れるというと何だかほんわかした物語のようだけど、そうでもない。起こる事件はいかにも現代っぽい嫌な感じ。やっぱり『児童書』の一言で片付けてしまうとちょっと違うな。

主人公の少年はネコの体を借りて事件を調べることにするのだけれど、これがいい。人が調べるのとは違うスリルやドキドキ感があって新鮮だった。けっこう夢中で読んでしまった。飽きさせない展開に、難しくないけど納得の謎解き。面白かった。でも後半のあれは切ないよー!

2008/01/10 Thu | 本 > 日本の小説・エッセイ > な行 > 西澤保彦

夜のピクニック

夜のピクニック (新潮文庫)

恩田 陸
新潮社
文庫

ひとことで言えば『青春小説』ってやつなんだと思う。裏表紙にもそう書いてあるし。
青春物ってあまり好んでは読まないのだけど、これはすごく面白かった。すごく好き。本屋大賞受賞作っていうのも納得したよ。

舞台は、「歩行祭」という高校の伝統行事。
80キロを歩き通すのが目標で、朝の8時から翌朝の8時まで、休憩や仮眠は挟むもののほぼ歩きっぱなし。
このイベントが進んでいく中で、いろいろなエピソードが絡んでくる。時間的には24時間の話なのだけれど、かなり濃いのだ。

話が進むにつれどんどん引き込まれていくし、続きも気になって、途中からはページを早く進めたくて仕方なくなっていたほど。
誰かから逃げているわけでも、冒険しているわけでもないんだけどね。新鮮な感覚だった。恋愛恋愛してないのもいい。

読み終えた後もけっこう余韻に浸ってしまったよ。いつかまた読み返したくなると思う。
あと、戸田忍くんが断然好みだ。

2007/11/13 Tue | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 恩田陸

氷菓

氷菓 (角川スニーカー文庫)

米澤 穂信
角川書店
文庫

「春季限定いちごタルト事件」がなかなか楽しかったので、別作品を読んでみました。
違う作品ではあるものの、雰囲気は通じるものがあった。
高校が舞台、ちょっとした事件、謎解き、連作。
主役2人の感じもなんとなく似てるかな。

事件そのものは日常で起こりうるもので、大した規模じゃない。
図書館のある本が毎週借り出されているのはなぜか、とか。
これだけだとほんと大したことじゃないようだけど、実際に読むと確かに謎で、気になってしまうのよ。

高校生にしては小難しすぎるセリフ回しが『こんな言い方しないでしょー』と少し気になったけど、きっとこれが味なんだろうと思う。
んー、でもこれ自体はあまり好みじゃないな。
かと言って登場人物に魅力がないわけではないし、話も面白いので、続編も読みたいなと思ってます。

あと「氷菓」の謎について。
敢えて言葉の意味を説明しなかったのかな、と思った。

2007/10/22 Mon | 本 > 日本の小説・エッセイ > や行〜その他 > 米沢穂信

小説こちら葛飾区亀有公園前派出所

小説こちら葛飾区亀有公園前派出所

大沢 在昌 秋本 治
集英社
単行本

7名の作家さんたち(大沢在昌、石田衣良、今野敏、柴田よしき、京極夏彦、逢坂剛、東野圭吾)が、こち亀の世界を舞台に執筆したアンソロジー。
「こち亀」の30周年と「日本推理作家協会」の60周年を記念して実現した企画らしいです。

「新宿鮫」や「池袋ウエストゲートパーク」の登場人物との競演もウリのひとつのようだけれど、私は両方とも読んでないのでそこには魅力を感じなかったな。

でもこれ、面白かった。
マンガが小説化されるというのはそんなに珍しくはないかもしれないけど、マンガの世界を舞台に独自の小説が書かれるっていうのは見かけないのでは?
7人がそれぞれ違った目線から書いているんだけど、ちゃんと「こち亀」の世界なのよね。
読んでいるうちに、マンガを読んでるような気分に陥ったほど。

私が一番気に入ったのは、東野圭吾作品。本当に、このままの話がこち亀にあるんじゃないかって思った。それくらいバッチリと「こち亀」ワールドになってたよ。
あとは京極夏彦と今野敏のも面白かった。大沢在昌の作品も、内容は好きなんだけど両さんが自分のことを「俺」って言ってるところに違和感を感じちゃってイマイチ入り込めないまま終わってしまった。

「こち亀」大好きな彼から見ると、また違うらしい。
1番が東野圭吾っていうのは意見が一致したけど、2番が今野敏で3番が大沢在昌だって。私がいいと思った京極夏彦は、ちょっと違うと言っていました。

今回の小説たち、マンガ化して欲しい。逆輸入って感じで。
それとこういう試み、他の作品でもやって欲しいなあ。
あ、でもまた「こち亀」でも良い!そしたら宮部みゆきとか読みたい。あと恋愛もの書いてるような人のも読みたいなあ。ばななさんとか山田詠美さんとか。でも「こち亀」読んでる作家さんじゃないと無理だよね…。

2007/06/21 Thu | 本 > 日本の小説・エッセイ > や行〜その他 > アンソロジー

春期限定いちごタルト事件

春期限定いちごタルト事件

米澤 穂信
東京創元社
文庫

タイトルに惹かれて購入。
高校1年生の小鳩くんと小山内さん。2人はわけあって小市民を目指す身。目立たず地味に過ごしたい2人なのに、なぜか出会ってしまう事件とは…。

事件と言っても殺人などではなく、ちょっとしたこと。たとえば二枚の絵の謎。ココアの謎。小さな謎なのです。でも気になる。主人公たちは、解きたいけど解きたくない、でも解かなきゃという感じで謎を解いていく。その様子が、あまりない感じで新鮮だった。

日常で起きる小さな不思議にも謎は隠されている、ってところが好き。加納朋子とか北森鴻の作品でもこういうのあるよね。
別に、人が死んだり大犯罪が起きたりしなくたって、謎解きは面白いなあって思った。
この著者の作品は初めて読んだので、他のも手を出してみたいな。

2007/05/31 Thu | 本 > 日本の小説・エッセイ > や行〜その他 > 米沢穂信

トリツカレ男

トリツカレ男

いしい しんじ
新潮社
文庫

ジュゼッペは、通称「トリツカレ男」。次々といろいろなものにとりつかれては、周りが見えなくなるほどに夢中になってしまう。そんなトリツカレ男がもっとも深くとりつかれたのは…。

文字が大きめで行間も広め。語るような文体。童話のような物語でした。

1章を読み終えた段階では、『特にオチはなくて雰囲気を楽しむお話なのかな』という印象だった。でも間違いだった。何とも先の気になるストーリー展開。過去にとりつかれていたことがきちんと財産になっているところに気持ち良さを感じつつ、一気に読み終えました。

途中で切ない場面がありながらもちゃんと素敵に終わっていて、読後はあったかーい気持ちに。もう一度、今度はゆっくり読み返したいなと思わせられる作品でした。

2007/05/25 Fri | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > いしいしんじ

しゃばけ

しゃばけ

畠中 恵
新潮社
文庫

主人公は、廻船問屋「長崎屋」の一人息子、一太郎(若だんな)。でもこの一太郎、主人公だというのに弱〜いの。小さい頃から体が弱く、すぐに寝込んでは生きるか死ぬかの騒ぎにまでなったりして。だから大事に大事に大事に扱われていて、ちょっと咳き込んだだけでも外出禁止になってしまうほど。そんな若だんながある夜こっそり外出したら、なんと人殺しに出くわしてしまい…という所から物語は始まります。

長崎屋の手代として働きつつ若だんなのお世話をしている2人の男性、彼らは実は妖(あやかし)。他にも若だんなの周りには、幼い頃から自然にそばにいた妖たちがたくさん。若だんなは、彼らの協力を仰ぎながら事件のことを調べることに。

若だんながとっても弱っちいのにとっても危ない目に遭うので、読んでてドキドキしてしまう場面も。だけどそこが面白い所かもしれないなあ。そして妖たちは、怖いとかそういうイメージではなく、何だか可愛い印象。これも魅力。

ストーリーも面白いし、文章も読みやすい。これはシリーズ化されるのも納得です。今ダーリンが読み始めているのだけれど、「ハリー・ポッター読んでる時みたいな気分になった」と言っていました。ほんとそんな感じ。完璧じゃない主人公、不思議な存在(でも怖くない)、独特の世界。思い返してみて、かなり言い得ていたので思わず感心してしまったよー。

2007/05/02 Wed | 本 > 日本の小説・エッセイ > は行 > 畠中恵

ドミノ

ドミノ

恩田 陸
角川書店
単行本

恩田陸さん、こういうのも書くんですね〜という嬉しい驚き。

主な登場人物だけで27人と1匹。
それぞれの事情を抱えつつ、彼らが東京駅やその周辺でてんてこまいしているのです。

まったく関係ない他人である登場人物たちにちょっとずつ因果関係がついてくるのも面白いのだけれど、とにかく先が気になってページをめくる手が止まらない。
みんな必死なんだけど、何だかコミカルで愛嬌があるのよね。

どんどん読んだのですぐに読み終わってしまった。
それぞれの今後をもっと読みたいなあという気持ち。
こういう小説が久しぶりだったっていうのもあると思うけど、『本って楽しいなあ』という気持ちにどっぷり浸ってしまいました。
読後感も悪くなかったしね。

登場人物が多いし場面の転換も頻繁だから、少しずつこま切れで読むのには向かないかも。
一気に読む方が絶対楽しめると思います。

あとは、ちょっぴりだけ作者視点の部分が出てくるのが意外で『へー』と思ったのと、ダリオに驚いた。

2006/07/20 Thu | 本 > 日本の小説・エッセイ > あ行 > 恩田陸

よくわからないねじ

よくわからないねじ

宮沢 章夫
新潮社
文庫

Amazonでの評価も高いし、タイトルから察するにすごく面白そう。
そう思い楽しみに読み始めたのだが、ちっとも面白くない!

きっとここが笑いどころなのだろうというのはわかるものの、笑えない・・・。
レビューによれば、電車で読んじゃいけないくらい笑っちゃうらしいのに。

そのうち面白くなるかもしれないからと、頑張っていくつか読んでみる。
でもダメ、何か文章も読みにくいし。

ツボが違うんだろうなあ。
彼にも読んでもらったところ、やはり「つまんないからもうやめな」というお言葉をいただいたので、私も途中で放棄してしまいました。

結局、ププッとも笑えずに終了。
その直後に読んだ、「TV Bros」に連載されてる松尾スズキの文章の方がよっぽど笑えたわ!

2006/06/12 Mon | 本 > 日本の小説・エッセイ > ま行 > 宮沢章夫